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第五十八話 常識と非常識
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はなく無事に古森を脱して、山岳地帯に入った三人。ちょうどよく滞空時間に限界が来たため山の裾野を形成する草原の端に降下することにした。

「さて、と・・・これから先は歩き、か」

「そうね。空の旅はしばらくお預けね」

ソレイユの言葉にリーファが同意する。そのことに疑問を感じたキリトは二人に聞いた。

「何でだ?」

「あの山が飛行限界高度より高いせいだ。だから洞窟なんてものが用意されてんだ」

「シルフ領からアルンに向かう一番の難所、らしいわ。あたしもここからは初めてなのよ」

「なるほどね・・・・・・洞窟か、長いの?」

「かなり。途中に鉱山都市があって、そこで休めるらしいけど・・・それより、二人とも今日はまだ時間だいじょうぶ?」

「リアルだろ夜七時か。俺は当分平気だよ」

「右に同じ」

「そう、じゃここで一回ローテアウトしよっか」

「ろ、ろーて?」

聞き慣れない言葉にキリトが疑問の声を上げる。

「交代でログアウト休憩するってことだ。長時間のプレイは疲れるからな」

「そういうこと。中立地帯だから、即落ち出来ないの。だからかわりばんこに落ちて、残った人が空っぽのアバターを守るのよ」

「なるほど、了解。リーファとソレイユからお先にどうぞ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。二十分程よろしく」

「おれは少し遅くなるから」

「何でだ?」

「姉たちの夕飯作らなきゃならんのよ」

その言葉に納得するキリト。もっとも、件の姉たちがこれを聞いたら自分で用意するから大丈夫だ、というかもしれないのだが。



ベッドの上で覚醒する桜火。ゆっくりと瞼を開け、アミュスフィアを外しベットの縁に腰掛けるように上体を起こす。首を振り、軽くストレッチをするとベッドから立ち上がり、自室を出て行く。

「さて、夕飯は何しようか」

今日は特に何も聞いてないし、スマホを見ても特に連絡は入っていないので帰ってくるのだろう。ならば高確率で恋人たる彼女もつれてくるだろう。ならば少し多めに作るか、なんてことを思いながら冷蔵庫を覗きながら夕食の献立を考える。

「今日の夕食は簡単にハヤシライスにするかね」

献立が決まれば後は調理するだけ。時間も限られているのですぐに桜火は調理に取り掛かった。

薄切りの牛肉に、食塩、コショウで下味をつけ、小麦粉をまぶし、タマネギを薄切りにニンニクを微塵切りにしてから鍋に油を熱してニンニクを炒める。
そこに加えて牛肉を肉の色が変わるまで炒める。肉の色が変わったら一度取り出し、バターを鍋に溶かしてタマネギをしんなりするまで炒める。
そしたら肉を戻し、マッシュルームと水、赤ワインを加えて十分程煮込み、更にデミグラスソースとトマト、ウスターソース
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