第一幕その十九
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第一幕その十九
「ミーノスの裁きの場の前か」
「それともエリシオンなのか?」
「いや、違うようだぞ」
「そうだな」
またしてもわざとらしく言い合う。そしてフェランドはフィオルディリージの、グリエルモはドラベッラの手をそれぞれ強く握って言うのだった。
「全ては貴女のおかげか」
「まさに女神だ」
言ってからその手を取って接吻をするのだった。二人はそれは静かに受けた。
そうしてここでデスピーナとアルフォンソがまた。姉妹に話した。
「危ないですぞ」
「確かに助かりました」
デスピーナの言葉がとりわけ真剣なふりをしている。
「ですが毒がまだ」
「けれどそれでも」
「この方々は」
「何とお優しい」
「美しい方なのか」
二人もまたあえて言う。しかしそれでも姉妹は態度自体は変えなかった。
「いえ、それでも私の心は」
「決して揺れ動くことはないわ」
「磁石の効果は素晴らしく」
デスピーナもここでまた話す。
「もう毒は消えようとしています」
「さて、面白い芝居が続くな」
「どうなっていくかな」
二人は楽しんでいた。しかしだった。
「しかし僕のフィオルディリージは」
「ドラベッラは」
二人の頑なな態度を見て喜んでもいた。
「確かだ」
「やはり僕達が勝つんだ」
このことを確信してそのうえでまた演技に戻るのだった。
「やはり貴女は女神です」
「何と美しいお心なのか」
「そう、穏やかにですよ」
デスピーナは姉妹への言葉を変えてきていた。
「今御二人はなおろうとしていますから」
「ですな」
アルフォンソもそっと援護射撃をする。
「優しく。そのままで」
「そうしてあげて下さい」
「毒は消えていっていますので」
「余計に」
「接吻を」
「御願いします」
二人も二人で調子に乗ってきた。
「さもないとまた」
「僕達の身体が」
「接吻!?」
「そんなことできません」
すぐに全力に拒否する姉妹だった。
「決して。そんなことは」
「できる筈がありません」
「御聞き下さい」
デスピーナは全てわかってまたしても姉妹に囁く。
「温かい御心で」
「ですが私は」
「そんなことは」
姉妹はあくまで拒もうとする。姉妹以外の四人はそれを見てそれぞれほくそ笑むのだった。
「さて、そろそろかな」
「はじまったわね」
アルフォンソとデスピーナは話が動いたと見ていた。
「これで後は楽になるな」
「一旦動かしたら」
「よし、いい感じだ」
「頑なじゃないか、やっぱり」
そしてフェランドとグリエルモは何もわかっていなかった。
「このまま拒んでくれれば」
「いいんだよ」
「けれど」
「まさか」
しかしここで二人は。ふとこうも思うのだった。
「本
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