第八十五話 【Fate編】
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を一度振り返り、その目に記憶した。
しばらく歩き、少年の姿が完全に見えなくなるとイリヤは自嘲気味に呟いた。
「…さっきのわたし、ちょっとおかしかったわね」
「そうだな。…先ほどの言葉はまるっきり要領を得ない言葉だった」
そうね、とイリヤは自嘲気味に囁く。
「あの子はキリツグの子供なの。キリツグって言うのはわたしをあの城に置いていったわたしの父親の事。だから、あの子がキリツグの子供ならわたしの弟と言う事になるわ」
二次成長手前のような容姿の彼女は、どう贔屓目に見ても先ほどの彼と並べば彼女の方が妹だろう。
だが彼女は弟と言った。それは彼女が見た目どおりの年齢では無いと言う事だった。
「そうか」
「…チャンピオンって結構淡白よね。もう少し掘り下げて聞いてみたいとは思わないの?」
「イリヤが話したいなら聞くだけならできるよ。…でも、聞いたとしても俺には君と彼の関係を変化させる助けは出来ない」
イリヤを守れと言う強迫観念はあるが、人間関係まで改善しろと言う事では無いし、何より聖杯戦争が終われば消える俺ではその全てに責任を負えない。
俺が一石を投じ二人の関係に変化をもたらす事は可能かもしれないが…それだけだ。聖杯戦争の終結はおよそ二週間ほどだろう。その後彼女達を支える事は俺には不可能なのだ。ならばいっそ…
いや…これは彼女自身が悩み、彼女自身が選択し、彼女自身が行動すべき事柄だ。
「そう?ううん、これは私の問題ね」
と言ったきりイリヤはまた散策に戻った。
冬木市の新都の方へと足を運び、それなりの格式のレストランで夕食を済ませると辺りはとうに真っ暗だった。ネオンサインのみが煌々と辺りを照らしている。
「チャンピオン、あなたサーヴァントの癖にレディのエスコートは中々のものなのね」
それはレストランで一緒に夕食を取った時にお姫様をエスコートするようにイリヤを伴った事に対する彼女の感想だ。
「それにこの辺りの常識を聖杯の知識からではなくまるで最初から知っているかのようだったわね。初見でバスやタクシーを利用したり、自動販売機の使い方なんてわたしも知識としては知っていてもどうやって利用するかまでは分からなかったというのに。あなた達サーヴァントに刷り込まれる常識はそう言ったものよね?と言う事はあなたは自分の経験としてあれらの使い方を知っていたと言う事」
「そうかもね。だけど、それがどうかした?」
「ううん。ただの確認。チャンピオンは現代を生きた人の魂…にしてはその技術がおかしいか…」
「俺の正体なんてどうでも良いだろう。伝承を持っていないと言う事は明確な弱点を世に知られていないと言う事だし、聖杯戦争では不利ではないはずだ」
「ええ、そうね。でも逆に
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