第5章 契約
第66話 おまえの名前は?
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部分に広がる膿疱。
そう。本来ならば、少女特有のはつらつとした肌に浮かぶのは醜い膿疱。普通の場合ならば、ここまで事態が進行した場合、例え、彼女が死の淵から生還出来たとしても、この少女には、一生、この病の痕跡が残り続ける事となる。
そう言う、末期的な症状を示す少女が……。
その瞬間、少女がうわ言を発するように口を動かした。しかし、その声は形を得る事はなく、空しく虚空へと消え去って仕舞った。
もしかすると、内蔵にまで及んだ膿疱に因る肺の損傷を併発している可能性も有る状態。
体温はおそらく四十度以上。正直に言うと、この状態の相手を如何にかする方法は、地球世界の現代医学にも存在していません。
何故ならば、この病気は、基本的にはワクチンを接種して予防する方法が主流で有り、そして俺自身は、このウィルスが完全に撲滅されたと言われていた世界からやって来た人間。故に、俺の体内には、このウィルスに対する抗体は持ってはいないはずです。
但し、この程度の病などで俺を害する事が出来る訳は有りません。
いや、正直に言うと、そう思い込む事でしか、こんな疫病が爆発的な流行を迎えている野戦病院などで治療に当たる事など出来る訳はないのですが。
「アガレス。彼女の命運は尽きてはいないな」
俺は、自らの傍らに立つ金髪碧眼、女性騎士姿の魔将にそう問い掛ける。そんな俺の問いを、少女の母親と思しき女性が心配げに聞いていた。
その俺の問い掛けに対して、軽く首肯いた後、
「大丈夫。私の見る所、その少女の命運は尽きてはいない。
故に、この病から助けたとしても、世界に歪みをもたらせる事はない」
……と、女性と言うよりは、騎士の口調でそう答えるアガレス。
しかし、命運が尽きて居ないはずの少女から俺が感じて居るのは死の穢れ。今にも消え失せて仕舞いそうな生命の炎の残り香と言う儚い気配。
これは、どう考えても異常な事態が進行中と言う事なのでしょう。
今日、何度目に成るのか判らないそう言う推測を思い浮かべた後に俺は、如意宝珠を起動させ、七星の宝刀を現出させる。
刹那、臨時の野戦病院と化した元ガリア両用艦隊司令本部の一室に、俺の霊気を受け、蒼白い輝きを放つ霊刀が顕われた。
そう。鎮護国家、破邪顕正の力を持つ霊刀。その能力には当然、禍祓いの能力を持つ。
俺の霊気を受け、眩いばかりの光輝を放つ霊刀に、少女の傍らに立つ母親が、思わず、その瞳を閉じた。
但し、現在の七星の宝刀が放つ光輝は、この地に満ちる陰気を受けて少し曇った刀身と、そして何より現状では俺自身が全能力を行使出来ない為に、全開の時に比べるとかなり足りない光輝を放つ事しか出来ないのですが……。
そして
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