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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第66話 おまえの名前は?
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ン湖に存在した連中だけ。

 思わず漏れて仕舞う笑み。蒼き静寂に包まれた世界には相応しくない、少し、我が儘な少女の高い声。
 そんな俺の仕草も彼女の気に障ったのかも知れない。

「何よ!」

 どう聞いても、あによ、としか聞こえない発音で、そう問い掛けて来るブリギッド。
 キッと言う擬音が相応しい視線と共に……。

 しかし、

「別に」

 ワザとそのかなり厳しい視線にも、そして、非常に不機嫌な雰囲気にも気付かない振りをして、そう答える俺。
 その俺の態度が彼女を苛つかせるのか、更に不機嫌度が上がって行く。

 そして、

「本当に、おまえは昔から――――」

 勢いに任せて何か言い掛ける女神ブリギッド。そして、その瞬間に自らの発した言葉に、少し驚いた表情を浮かべる。
 そう。確かに、先ほどの彼女の言葉は少し不思議な雰囲気を伴っていました。
 まるで、昔の俺の事を知って居るようなその言葉の内容。

 ただ……。
 ただ、この台詞に因り、もしかすると彼女、崇拝される者ブリギッドも湖の乙女と同じように、俺の前世で某かの関係が有った存在の可能性も出て来たとは思いますが。

 人と人の出会いに偶然は殆んど存在して居ません。其処にはある程度の縁と言う物が存在し、そして、魂魄と言う物は無限の時間の中を……。無限の世界の中を永遠の旅を続ける物。
 その旅の最中に出会い、そして、強い絆で結ばれる相手と言うのは、それ以前の生に於いても、某かの縁に結ばれた相手と出会う可能性の方が高い物ですから。

 そんな、やや思考の海に沈み掛かった俺を、先ほどまでよりは多少、マシになったとは言え、普通の少女ならば明らかに不機嫌だろうと言う瞳で俺を見つめた後に、右手を差し出して来るブリギッド。
 その唐突な行動に、少し面食らったように一瞬の空白を作って仕舞う俺。

 そんな俺に対して、

「どうしたのよ。送ってくれるんでしょう?」

 やや不機嫌な雰囲気ながらも、そう問い掛けて来るブリギッド。
 差し出して来た右手を、更に強く俺に意識させるようにしながら。

 その一言で、ようやく失調状態から回復した俺が、彼女の繊細な、……と表現すべきその右手をやや下方から優しく取る。
 ダンスの相手から差し出された手を取るかのような雰囲気で。

 そして、

 その少女に相応しい華奢で、柔らかな手の感触に少しドキリとしながら。

 そして……。
 そして、次の瞬間、二人の姿はこの場から消え去って居たのでした。


☆★☆★☆


 十月(ケンの月)第二週(ヘイムダルの週)、ラーグの曜日。

 簡易のベッドに寝かされた十歳ぐらいの少女の顔全体から首、そして、粗末な洋服に隠されていない全ての
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