第5章 契約
第66話 おまえの名前は?
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ょう。
つまり、こんな短い間で保留にして有る契約に関しての見極めが終わって居るとは思えなかったからの、今回はこの問い掛けだったのですが……。
しかし……。
しかし、炎の少女はその右手を黙って見つめたまま、反応を示そうとはしない。
差し出された右手の間を、ゆっくりと流れて行く時間。しかし、それは拒絶されている雰囲気ではない。
ただ、僅かばかりの逡巡と、それを上回る興味。
俺の右手を見つめていた瞳をゆっくりと閉じて、そして、もう一度開いた時に、彼女の視線は俺の差し出された右手などではなく、霊障により変わって仕舞った色の瞳を見つめていた。
そうして、
「おま――。あなたの名前を、もう一度教えて欲しい」
何かの決意の元に、名前を問い掛けて来るブリギッド。その瞳は探る者の瞳。
いや、何かを思い出そうとするかのような、そんな瞳に感じられる。
これは、彼女の記憶に有る、誰か。自らのかつての契約者と俺を重ね合わせる行為なのか、それとも、もしかすると以前の俺……前世の俺が、彼女とも某かの関係を築いていたのか。
但し、俺の方には、彼女から強烈な何かを感じる事は――――――。
いや。強烈な何かを感じないのは事実ですが、まったく何も感じないのか、と言われると、それは否と答える相手でも有ります。
彼女もまた……。
「俺の名前は武神忍。武神が姓で、忍が名前」
そんな、何か非常にもどかしい、上手く言葉に表せられないようなもやもやとした物を感じながらも、それでも平静な振りを装い、炎の女神に対して、そう答える俺。
湖の乙女を前にした時に感じた、ただ見つめているだけで、涙が出て来るような強い感情でも無ければ、蒼い光に包まれた夢の世界で、たった一度だけ繋がった少女に対する懐かしい想い。……思慕にも似た感情とも違う。何か、別の感情を……。
「武神……忍――――」
何かを思い出すかのように、蒼い光の世界で、形の良い眉根を寄せて思考の海に沈む彼女。その表情は、かなり不機嫌な様子。
おそらく、彼女の方も、俺と同じような、何処か奥の方に棘のような物が刺さった感覚が有るのでしょう。直ぐそこまで出かかっているのに、中々出て来ようとしないもやもやとした感情に支配されて居る。そう言う類の気を発して居ますから。
しかし、
「あぁ、もう、イライラする! おまえも、そして、あの水の精霊も!」
矢張り、と言うか、終に、と言うべきか。取り敢えず、悩むのに飽きた崇拝される者ブリギッドがキレて、俺と、ついでに湖の乙女ヴィヴィアンに対して悪態を吐いた。
そんな幼い少女そのものの彼女の本質を知って居るのは、この世界では俺と、あの水の邪神が顕現した時のラグドリア
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