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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第66話 おまえの名前は?
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風が、流石は自動空戦フラップを装備した機体だと言う見事な運動性能を見せ、相手の後ろを取ったのでした。


☆★☆★☆


 周囲には魔眼の邪神のもたらした惨状が広がっていた。

 古の時代より陽光と風と雨に守られ、育てられた木々は、有る者は薙ぎ払われ、また有る者は全ての精気を失い、無残に枯死した姿を晒す。
 しかし、それだけ。破壊の爪痕は残り、大地からしみ出した邪神の気が、世界の精気を喫い尽くしていたとしても……。
 上空に顔を出す蒼き女神が放つ光の矢のみが支配する、秋の夜に相応しい静寂を世界は取り戻して居た。

 そう。もう既に、魔眼の邪神は、この闇の丘の地下には封じられている訳では有りませんから。

 上空には完全に合一した二人の女神の姿が。そして、風は濃い秋の気配を運び……。
 先ほどまで、確かに其処に存在して居た異世界の存在。紅き魔眼の邪神は、俺と湖の乙女。そして、炎の女神ブリギッドに因って、陰陽の気へと変換されて仕舞い、ヤツが其処に存在していた痕跡を探す事さえ不可能な状況へと変わっていた。

 一瞬、何かを残して少女(湖の乙女)が、自らの元に還って行った。
 その去り際に残した彼女の心が、これから起こり得る炎の精霊との契約について、彼女がどう感じているのかを如実に物語って居るかのようで……。

 但し、その事に付いて、彼女は一言も言葉を残して行く事は有りませんでしたが。
 ただ、告げて行かなかった事が余計に……。

 いや、これは感傷に過ぎない行為。
 そう考え、在らぬ方向に向けたまま、意識的に見つめる事の無かった炎の少女の方向へと、視線を転ずる俺。

 蒼き光の雫を受けるその姿は……、幼い少女の姿ながらも正に女神。神聖にして冒すべからざる存在。
 その彼女が、少し険しい瞳で俺を見つめ、そして、其処から何かを感じ取ったのか、その表情から険しい部分がフッと和らいだ。

 炎の精霊と水の精霊の仲が悪い、などと言う伝承を俺は聞いた事がないのですが、これまでの二人の間に漂っている雰囲気から推測すると、どうやらこの二人に関しては、イマイチ相性が悪い相手のようでは有りますね。

 俺は、そう考えながら少女神。崇拝される者、女神ブリギッドに対して右手を差し出す。
 それはまるで、月下に踊るパートナーを求めるが如き、自然な雰囲気で。
 そして、

「そうしたら、火竜山脈まで送って行くから、手を取って貰えるか?」

 ……と、短く問い掛けた。
 精霊の生命に関しては、はっきりとした事は知りませんが、ほぼ無限で有ると言っても過言ではないと思います。故に、彼女が見極めると言ったのですから、それはかなり長いスパンで俺の事を、自らのパートナー(契約者)に相応しいかどうかを見極めると言う事なのでし
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