沙穂暴走
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精神を金剛石、そして、ナイアーラトテップの権能をハンマーだと仮定しよう。いくらハンマーの攻撃力が高くても、無傷の金剛石を破壊することは難しい。だが、既に罅があちらこちらに入った金剛石を破壊することは、そんなに難しくない。
つまり、まだ人間の悪意に染まっておらず、無垢なままの子供や赤ん坊などにはこの権能は効果を及ぼしにくい。・・・が、逆に、大人になって世界の厳しさを知った人間や、人の悪意や世界の裏側を沢山見たことのある人間は、簡単に精神を侵されてしまう。そういう類の厄介な権能なのだ。
さて、実は、そこで終わるのなら何の問題も無かった。
沙穂が錯乱し、問答無用で暴れまわっても、平常心を欠いた状態ならば、名古屋河姉妹ならばなんの問題も無く無力化することができる。・・・・・・そう、そんな性格だったのなら、どんなに楽だっただろう?
偶々沙穂が転移したのと同じ七階にいた護堂たちにとっては不幸なことに、生命を冒涜するような一面に広がる肉の世界や、精神を犯し尽くすような世界に満ちる音、生きていることを後悔するようなレベルの腐臭などという、その程度のことで取り乱すほど、彼女は甘い性格では無かったのだ。
「生物の気配がするであります。・・・・・・取り敢えず、斬り殺したらこの空間から出られるでしょうか?」
狂っているのが正常という彼女にとっては、この空間さえも、普段と少し違う程度の感想しか抱けない。取り敢えず、近くにいる生命体を斬り裂いてから考えればいい。今の彼女には、護堂たちの気配が人間のものだと気付くことは出来ない。自分以外の全てが化物に見えるし感じるのだから。
・・・更に言えば。
彼女が新たに手に入れた権能の副作用も、護堂たちにとって悲劇だったと言っていいだろう。
「繰り返せ。肉が穿たれ骨が折れようとも。立ち止まるな。その目を抉られ、脳髄を掻き乱されようとも。宿敵はそこに。勝利はそこに。我は不屈の戦士成!」
彼女が聖句を唱え終わったその瞬間、彼女は”今月今夜”を抜き放った。それは、彼女が得意とする居合抜き。・・・だが、それまでの居合とは全く違う点が、その技にはあった。
「ふ・・・アハハ。凄いであります!!!」
威力。
今までとは、まるで桁違いのその攻撃力。そして、攻撃範囲。彼女は、ただその場に立って、一瞬の内に5回ほど居合抜きをしただけなのだ。今までなら、彼女の周囲の壁が斬り裂かれるだけで終わっただろう。・・・しかし、今の彼女の攻撃によって、この病院の七階部分どころか、病院から少し離れた位置に建っているビルの七階部分
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