十八話
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すぐさま無視して一人駆ける。
文句は言われるだろうが知ったことか。心の中で悪戯っ子のように笑いながら抜け駆けを選ぶ。そもそも、彼に伝えたら絶対に穏やかな事にはならない。逆に抜け駆けされてしまう。
何をしよう何を言おう。決まらないまま、壁を蹴る。
全力の彼女にとって、そこまでの距離は大した時間もなく辿り着けてしまう。
だから、思考の纏まらぬうちにその姿が視界の内に収まった。
知らぬうちに小さく口元が緩み、手が腰元に伸びていた。
ああ、簡単な事だったのだ。
考えるまでもない。することなど最初から決まっていたじゃないか。
そう気づき、彼女は全力で地を蹴った。
今の自分を見てもらう。それ以外に答えなど思いつかなかった。
近づく自分に気づいていた彼に彼女は小さく笑い、自分がしようとしていることに気づき答えてくれる彼に再度笑った。
迷いはもうない。自分の全てをぶつけよう。
そう思い、彼女は小さく呟いた。
???レストレーション
と。
「あれがグレンダンで合ってる?」
「うん、そうだよ。久しぶりだなあ」
もはや目の前に迫った故郷に、レイフォンは懐かしさをこめて言った。
「うーん、懐かしいな。やっと帰って来たんだ」
放浪バスから降り、帰ってきた故郷だ。
座りっぱなしのバスで固まっていた体を伸ばしながらレイフォンは言った。
「外縁部が広いけど、どうして?」
「汚染獣との戦いが多いからかな。外縁部で迎え撃つことが多いし」
「そんなに多いんだ」
「他の都市から比べると凄い多いってさ。僕からしたら普通なんだけど。じゃ、行こう」
グレンダンまで来る人はとても少なく、ほとんど人のいない停留所を後にする。
向かう先はレイフォンの家である孤児院だ。
(……ん?)
歩く途中、レイフォンはとても懐かしい剄の波長を感じた。
しかも、それがこちらに向かっていることに気づく。
(えー………え、ええー………これって)
隠す気配などないそれに、ついため息が漏れる。何をするのか丸わかりだ。
どうしようもない諦めと懐かしさが胸に溢れる。
前は嫌だったはずなのに、どこかで嬉しさを感じてしまっている自分に呆れてしまう。
ああ、帰って来たんだと実感がわいてきてしまう。
「ちょっと後ろに下がっててくれるアイシャ。出来れば少しの間ここで荷物を預かって貰っていい?」
「分かったけど……どうかした?」
疑問を浮かべるアイシャに、レイフォンは余計な荷物を降ろしながら苦笑して答える。
「友人がさ、来てるんだ」
「友達が?」
「どうなんだろうね。良く分かんないや」
訳が分からないと首を傾げるアイシャに曖昧に返し
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