十八話
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ンはシンラに言う。
「それは良くない考えだよ、レイフォン」
だが、シンラはそれを拒絶する。
「契約と言ったように、金銭が絡むことに関しては早くした方が良い。君の言うそれは、報酬の受け渡しもその時にすればいいと言うのだろう?」
「まあ、そうですね」
そういうことになるのかな、とレイフォンは思う。
それに対し、シンラは首を小さく振る。
「そういう考えは改めた方が良い。既に君との契約条件は満たされ、僕達は自前の放浪バスを持っている。もし、僕達がそれに頷き、明日君が目覚めた時僕達が都市を去っていたらどうする」
軽く想像する。
つまり、報酬は前金だけで残りを払われないまま逃げられる、ということだろう。
「……えーと、どうしましょう」
「ただ働き、という事にはならないが報酬が著しく少なくなってしまう。それに、この世界では相手を捕まえる事は非常に難しい。個人契約な以上、ほぼ不可能だ。契約の仕方によってはただ働きになることもある。騙されれば泣きを見る」
「……話は分かりました。でも、シンラさん達が騙すなんてことするようには思えません」
一年以上共にいて、色々と世話になった相手だ。どんな人達かぐらいわかっている。
だから、そんなことをするだなんて想像出来ない。
「無論、僕達に騙すつもりなんてないよ。捕まらなくても悪評は流れる。色々あって今の旅団の名前を掲げて四年。いつまで続くか分からないが、変えるつもりはないしね。信頼にもつながる」
だけど、とシンラは続ける。
「騙す人間も世の中にはいくらでもいる。昨日までニコニコしていた相手が、今日になって手のひらを返すこともある。騙すということへの第一歩は、相手に自分を信頼させることなのだから。金は人を変えるし、信頼や情を金に換える人間なんていくらでもいる。かけた時間と向けられる信頼の大きさが、奪える金額の大きさになる。だから、こういったことは先にやった方が良いし情とは別に考えた方が良い事が多い。迷いや躊躇いは無くして確実な事をする方が良い」
「そうですか」
正直細かいことは良く分からなかったが、お金の事に関してはある程度シビアになった方が良いという事だろう。
相手の事は信頼し過ぎず、確実な事をしろ、ということだろう。
昔何かあったのだろうか。
そう思いながらレイフォンは紙にサインした。
「サインしました」
「確かに。すまないね、変な事言って。最後の方関係なくなってたし」
「いえ、勉強になります」
「ふふ、そうかい。それは良かった。何か頼むかい? デザートでも奢るよ」
「あ、いいんですか?」
メニューを開き、品に目を通す。
長い契約の終わりだ。食べながらするのもなんだろうと頼むのを控えていたのだ。
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