第百二十七話 五カ条の掟書その十二
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だが闇に蠢く者達はそのことを知っていた、それでその闇の中でこのことについても楽しげに話すのだった。
「浅井の方も上手くいきそうじゃな」
「浅井長政が駄目でも父じゃな」
「あの者を陥とせばよいな」
「そういうことじゃ」
また中央の者が言った。
「主が二人いればな」
「一方を陥とす」
「そうすればよいのですな」
「しかも逆らえぬ方ではなくじゃ」
この場合は長政のことだ。
「ああした者を攻めるのじゃ」
「ですな、院政の頃よりですな」
「それが乱す元ですな」
「保元の乱然りその前の薬子の乱然り」
随分古い頃の乱だった。
「天智天武の頃よりじゃったな」
「二人共我等に気付いていましたが」
「それよりもでしたな」
「あの頃の皇室は身内でよく争ってくれた」
中央で楽しそうに言う。
「それで大いに血が流れたがな」
「あのまま争い続けて欲しかったですが」
「そうもいきませんでしたな」
「もう少し煽るべきであったわ」
中央の声はここで無念そうに言った。
「折角だったからのう」
「桓武帝の頃で終わりましたな」
「後は中々」
「平安京の結界は馬鹿に出来なかったわ」
忌々しげな言葉だった。
「今でこそ弱まっておるがな」
「織田信長が気付いておらぬにしても強めようとしていますな」
「安土にも城を築くとか」
「しかも仏像や墓石を入れて結界にするとか」
「我等に無意識のうちに気付いておるやも」
「石山の寺と合わせてこの国の結界になりますな」
「我等に対する」
闇の中の者達はこう話していく。
「折角比叡山と高野山が腐った隙に入り込み鬼門と裏鬼門を制したというのに」
「また結界を置かれては厄介ですな」
「だからじゃ」
それ故にだというのだ。
「織田信長を消すのじゃ」
「我等に害を為すやも知れぬあの男を」
「そうしますな」
「そうじゃ、顕如もな」
彼もだというのだ。
「あの者も我等に気付くやも知れぬ」
「親鸞以来の切れ者ですな」
この言葉が出た。
「あの者は」
「うむ、親鸞よりもさらに切れる」
「そして法力もまた」
「同時に覇気の持ち主じゃ」
僧であるがそれでもだというのだ。
「あの者もまた、じゃ」
「厄介ですな」
「それも非常に」
「織田信長はこの度こことで葬りたい」
絶対にだという言葉だった。
「朝倉との戦でな」
「しかしそれが果たせぬなら」
「その時は」
「本願寺じゃ」
この寺だというのだ。
「あの者を使うぞ」
「ではその様に」
「その際は」
「一向一揆も煽る」
本願寺が起こすこれもだというのだ。
「入り込むぞ」
「あの者達も気付かぬ様に」
「そうしてですな」
「一向一揆だけでは手ぬるい」
そうだというのだ
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