第一幕その十一
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第一幕その十一
「それにこの方々トルコ人ではないの?」
「イスラム教徒とは絶対に」
「いえ、キリスト教徒ですよ」
「そうなのですが」
二人が言った。
「アルバニアから来ました」
「姿はトルコですが心はそこにあります」
「アルバニアから?」
「また随分と遠くから来られたのね」
二人は一応話は聞いた。
「けれどそれでもよ」
「私達は決して」
「どう思うかね」
「ええ、そうね」
アルフォンソとデスピーナは楽しそうに顔を見合わせて話すのだった。
「怒ってるけれど本当のところは」
「怪しいものだね。本当の心はね」
「おい、やっぱりな」
「そうだよな」
そして二人は嬉しそうに顔を見合わせていた。
「彼女は貞節だ」
「清らかだよ」
「私の心はあの人のもの」
「私もよ」
姉妹は必死の顔で言い切る。
「何があっても変わりはしないから」
「決して」
「まあまあ」
ここで笑って言ったのはアルフォンソだった。
「そんなに騒ぐことはありませんよ」
「アルフォンソさん」
「貴方も来られたのですか?」
「最初からいますが」
姉妹はそこまでは気付いていなかったのである。
「本当に最初からここに」
「そうだったのですか」
「気付きませんでしたわ」
「ですからお静かに」
姉妹が少し落ち着いたのを見てまた声をかけるのだった。
「ご近所が驚かれますよ」
「え、ええ」
「わかりましたわ」
彼に言われてやっと完全に落ち着く姉妹だった。ドラベッラはそのうえで彼に話すのだった。
「それでですね」
「こちらの方々ですか」
「そうです。アルバニアからの方ですが」
「それが何か?」
「何かではありません」
今度はフィオルディリージが彼に言う。
「今日だというのに」
「この方々は私の知っている人達でして」
「はい、いつもお世話になっています」
「御立派な方ですね」
二人はまたアルフォンスに合わせて芝居をするのだった。
「このナポリに来てもおかげさまで」
「苦労はしていません」
「いやいや、私はとても」
演技で謙遜しての言葉である。
「何もしていませんから」
「そうではありませんよ」
「その通りです」
また笑って話す二人だった。
「今日も朝を御馳走になっていますし」
「有り難うございました」
「それでです」
フィオルディリージは二人を不審な目で見ながら問うた。
「何の御用件でこちらに」
「はい、どうか」
「是非共」
二人はここで同時に姉妹の前に片膝をついてきた。フェランドがフィオルディリージの前に、グリエルモがドラベッラの前にである。
「どうかこの罪人を」
「ならず者をお救い下さい」
「いけませんわ」
フィオルディリージが拒む言葉
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