暁 〜小説投稿サイト〜
もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
もしも最強の騎士の力を手に入れたら・・・?
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気の毒だとは思うが、逆を言えば俺が感じるのはそれだけだった。どんなに良心を持っていても、しょせん人間は自分本位な生き物だからだ。
だから、同情はしても助けはしない。
ガチャッ
「?」
突然奥に続く扉が開かれる。はて、あそこにはだれも入っていなかったはずだが―――
「・・・・・・・・」
「――――」
なんかいるーーーーーーーーー!!!
まるで「やぁ」と気さくに話しかけてくるような雰囲気で、それは扉から出てきた。
それは、巨大な鎧だった。全身を包む漆黒の鎧に、赤くたなびくマント。まるっきりどこかのファンタジーに出てくる闇の剣士の様な姿に、俺の脳は一時的なフリーズを起こした。
「な・・・何だてめぇは!!どこから入ってきやがっ―――」
扉の近くにいた男がその鎧に果敢にも詰め寄り・・・
ご っ !
「―――あじゃぱぁ!?」
奇声を上げながら吹っ飛んだ。空中で四回転半した男の身体は頭からコンクリートに激突し、ダラダラと血を流しながら動かなくなった。よく見ると鎧が拳を突きだしたまま固まっている。殴られた、という事らしい。鎧からは「この鉄拳はサービスだから、先ずは喰らって死んでほしい」といった感じの雰囲気を醸し出している。
俺は迷わず銃に手を伸ばした。倒れた男の容体は知らないが、少なくとも意識はないらしい。あれをもろに喰らえば最悪即死しかねないという判断からの咄嗟の行動で、俺はすぐさまその鎧に銃弾を叩き込んだ。
ばん!ばん!ばん!
放たれた弾丸は鎧に当たり跳弾、だが最後の一発が頭部の兜の隙間に吸い込まれるように入っていった。何故鎧を着ているのかは知らないが、中身は人間の筈。ならば鎧の隙間を縫った攻撃なら効く。
「よし!」
で、次の瞬間その隙間から弾丸がポロッと出てきた。
うん、意味が分からない。
しかも跳弾した弾が何と周囲にいたほかのごろつきの足に器用に命中しており気が付いたら立っているのはクライアントと話をしていた男と俺だけになっていた。
鎧は「うん、「絶対に勝てない」んだ。済まない」とでも言いたげな態度でゆっくりこちらに迫ってくる。
俺は残っているもう一人に目線を配った。
―――帰るか。
―――おk。
その瞬間、俺達は確かに互いの心を通じ合わせた。
まじやってらんねぇべよこげん仕事。実家帰って稼業継ぐっぺ。
(・・・勝っちゃった)
すずかは目の前で起きたことを、まるで演劇を見るようにぼんやりと眺めていた。
唐突に現れた鎧は唐突に怖いおじさんたちを倒し、追い払ってしまった。
不思議と自分が助かったという安堵は感じなかった。そして、鎧に対する恐怖も感じなかった。
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