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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
もしも最強の騎士の力を手に入れたら・・・?
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――――――




その日、月村すずかは恐怖に支配されていた。

確かに自分は学校から自分の家へと帰る途中であったはずである。それが、どうして手足を縛られてこんな暗くて狭い場所にいるのだろうか。声を出そうにも口にはガムテープが張り付けてあり、立しけを求める声さえ出すことが出来ない。
周囲を見渡すと、数人の大人が立っていた。それぞれスーツを着ていたり普通の私服だったり作業員みたいなつなぎを着たりしている。ただ、全員が懐に”何か”をいれている事を除けば、普通の人に見えた。

聡い彼女はぼんやりながら自分に何が起きたのかを察した。自分は恐らく、誘拐されたのだと。
彼女の家は少なくともこの町の中ではかなりの金持ちである。その家の人間である自分を誘拐すれば多額の身代金を得られると考えたのかもしれない。

だが、それと同時にすずかは別の可能性が頭にこびりついて離れなかった。
すなわち自分たち――”夜の一族”の事を知って誘拐したのではないかという可能性だ。考えにくい事ではある。その情報は誰にも知られてはならない月村家の秘密であり、知ったものはその記憶を消し去られる。それでも秘密は完璧に守れるわけではない。
夜の一族は普通の人間ではない。人の生き血を啜り、人間を越えた力を持つ種族。それが私達だ。ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』ほど馬鹿げた力は有していないが、それでも人間から迫害されてもおかしくないほどの異常な存在、化物だ。
もしどこかでその情報が漏れたのならば・・・最悪、人体実験の道具にされるかもしれない。特に未だ体が未熟な私は捕まえるのにおあつらえ向きだろう。
姉に昔から自分たち一族の事を散々聞かされていた彼女は、その可能性があることをよく理解していた。

『ーーーーーーー』
「ーーーーー?」
『ーーーーーーーーー』

周囲の大人たちが何か話している。が、上手く聞こえない。ご丁寧に耳栓までされているようだ。

これからどうなるか分からない不安と何をされるか分からない恐怖の二重苦は、じわじわとすずかの心を蝕む。何も出来ずに待ち続ける事しかできないすずかは、次第に不安に耐え切れずに体を震わせ始めた。視界は溢れてきた涙でぼやけ、呼吸が苦しくなる。まだ9歳の子供である事を考えるとその反応は当然と言える。いや、むしろそれだけ正確な思考を今まで続けられていた事の方が不思議なくらいだ。

そんな中、ふともたれかかっていた背中に小さな振動が伝わってくる。反射的に自分の横を見たすずかの瞳に映ったのは―――


(・・・・・・おっきい)

高さ2メートル以上はあろうかという、真っ黒な鎧戦士の姿だった。



 = =



目が覚めると、そこは知らない天井でした。
暗く埃臭い謎の個室。何とも辛気臭いが、ここ
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