Mission
Mission9 アリアドネ
(5) マクスバード/エレン港 A
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「『オリジンの審判』の時歪の因子の上限は覚えてる?」
「100万、だっけ」
「そう。この100万はすなわち100万個の分史世界を意味する。分史対策室では分史世界を16進法でナンバリングしてるでしょ。このゲームは100万を超えれば人間の負け。そのルールの上で、ルール違反の100万個目を超えたナンバーの分史。とーさまはワタシたちの分史――世界を便宜的に『番外』と位置付けたわ」
番外分史、と数人が確かめるように反芻した。
「分史であっても『審判』の概念はある。トール遺跡でそれは知ったわね? 若い頃のとーさまも叔父貴も、挑んだ。とーさまも叔父貴もすごく強かったし、仲間もいたし、『鍵』もいた。今度こそ『審判』に勝てるって、悲しいことはその代で全部終わりにできるって、みんなが信じてた。でもね………………だめ、だった」
「だめ、って……『オリジンの審判』に負けたってこと?」
レイアが問うたが、ユティは俯いて答えなかった。そうだけど答えたくない、とでも言うように。
「お前の分史では具体的に何が起きたのだ」
ガイアスが皆を代表して核心へと切り込んだ。
「オリジンは魂の“負”から生じる瘴気を浄化する精霊。そのオリジンに魂を浄化する限界が来てた。分史世界が増えすぎたの。『カナンの地』は全時空で唯一、魂を循環させてる場所。増殖した分史世界の魂も、オリジンが引き受ける。カナンの地には浄化しきれない瘴気が溜まっていった。それが、破裂した」
「破裂して……どうなったんだ?」
「地上は瘴気に冒された。人の住める土地は減った。とーさまとワタシが山奥に住んでたのも、そこが数少ない非汚染区だったからよ」
「普通の人たちはどうやって生活してたんですか?」
「同じよ。非汚染区域を探してそこに住む。もっとも完全な非汚染区域に住めるのは一握りの特権階級。大抵の人間は、瘴気はあるけど何とか生息できるって土地で暮らしてた」
「でもそれじゃあ体によくないんじゃ」『大丈夫なのー?』
「よくない。いずれは瘴気に冒されて、マナを吐くだけの“物体”になる」
『イヤーーっ!』「人間が、そんなものになるなんてっ」
エリーゼはもちろん、ジュードもレイアも青くなった。
「人間だけじゃない。ユティは青空も夜空も見たことない。造花しか知らない。動物は黒匣製の人形。薬が入ってない食べ物、食べたことがない」
ふいに悟った。16歳にしては小柄な体格。動物に対する偏った知識。それらは『番外分史』の環境によるものだったのだ。
「ユティさんの世界の我々は、そのような事態になるのを指を咥えて見ていたのですか?」
「まさか。もちろん止めようとしたわ。でも、いくつもの不幸が重なって、カナンの地に辿り着いた時には、手の施しよ
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