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SAO─戦士達の物語
GGO編
百二十一話 墓参り 弐
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いた。二人の目の前には、綺麗に磨かれた一つの墓石が有り、其処に「小野和田(おのわだ)」と名字の打たれた、墓石が有った。

「小野和田 舞」

そう。
美雨の親友。SAOに置いて、「アイリ」と名乗っていた少女であり、同時に、リョウコウが、あの世界で殺した、オレンジプレイヤーの一人だ。
あれから、涼人は美雨に指定された駅まで電車を乗り継ぎ、其処から一件の和菓子屋に向かった。其処は彼女……舞の実家だと言う家で、そこで涼人を待たせつつ美雨は舞の両親に挨拶をしていた。無論、涼人の事は《友人》だと言う事にして。

そうして其処から更に寒空の下を十分程歩き二人はこの墓の前に立っていた。

「…………」
「……こんにちは。舞」
そう言って、美雨は墓に持ってきた花と元々会ったそれを入れ替え、軽く墓を手入れすると、線香を立てて手を合わせる。
そして涼人は問言うと、少し道具などを手渡したりする以外は、終始後ろで彼女の事を見ていた。祈る事もしない。
今美雨が祈っている相手を、この墓の中に叩き込んだのは自分だ。それを考えれば、此処で手を合わせる事は寧ろ馬鹿にしているとしか思われないだろう。
そしてそんな涼人の心情を知ってか知らずか、美雨は何も言わずに手を合わせ終えると、振り向いて言った。

「うん……付き合ってくれて、ありがと。いこっか」
「……おう」
これが、美雨があの時言っていた、「お願い」だった。
「一日だけ、自分の用事に付き合って欲しい」それが彼女の望みだったからだ。そうして、涼人はそれを受領した。

「舞ね、あのお店継ぐんだって、ずーっと昔から言ってた。和菓子とか、作るの大好きだったの。だから……」
「……そうか」
俯きながら言う美雨に、涼人の返す言葉は少ない。尚も、美雨の言葉は続いた。

「私ね……あのお店で、働こうと思ってるんだ。お菓子の作り方、教えてもらって、ちゃんとした所で修業とかして……それで……」
「……あの店、貰うのか?」
「っ、う、うんっ……」
頷いた美雨の顔が、どんな表情をしているのか、涼人から見る事は出来なかった。
本当なら……謝るべきなのかもしれない。たとえ本心からは悪い等と思えてはいなくても、形だけでも、謝罪を送るべきなのかもしれない。

しかし本心からそう思えないのならば……それは、単なる逃げでしかないような気もした。自分の自己満足の為の……

「あ、でも、ちょっと悩みもあってね。結婚相手、居なくなったりしちゃったりするかな。とかさ」
「女で、和菓子職人、か……まぁ、確かになぁ……」
そうして、其処までの間、会話は、二人の内心はともかく、在る程度は穏やかに進んでいた。

「だからさ、そうなったら……」
美雨が、この発言をするまでは。

「涼人君、私の事貰わない?」

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