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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十九話  聞こえてくる声
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「随分と激しく遣り合っていたようだが?」
「済まぬ、ついカッとなってしまった」
ルッツ提督が冷やかすとファーレンハイト提督が苦笑した。

「ロイエンタール提督に悪気はないのだが……」
「いや、それは分かっている。彼にとってはあれが普通だと言う事も。ただちょっとな」
俺の言葉にファーレンハイト提督がまた苦笑を漏らした。

「持つべきものは良き同期生だな」
「そうだな。卿とワーレン提督を見ているとつくづくそう思う」
二人の声は軽やかだった。やれやれだ、どうして俺が尻拭いをしなければならんのか……。俺が溜息を吐くと二人が声を上げて笑った。

「それにしてもゲリラ戦が現実のものになるとは……」
「厄介な事になった」
「全くだ。だが頭領はこの事態を想定していたようだな」
「うむ、突拍子もない作戦と言っていたが……」
ルッツ提督とファーレンハイト提督が話している。突拍子もない作戦か……、一体どんな作戦なのか、頭領が自分を責めていた事がちょっと気になった。



宇宙歴 799年 4月 10日   ヒューべリオン  ヤン・ウェンリー



『帝国軍を撃破できたのは貴官の第十三艦隊だけだった。他の艦隊は駄目だったな、ライガール、トリプラ方面に来た帝国軍はモートン、カールセンの艦隊を見ると直ぐに撤退してしまった』
スクリーンに映るビュコック司令長官は面白くなさそうな表情をしている。無理も無い、最低でも二個艦隊は撃破したいと考えていたのだ。

『どう思うかね、これを』
「哨戒活動に出た、というわけでは無さそうです。おそらくこちらの動きを見定めるために出したのでしょう」
『帝国軍は我々がゲリラ戦を仕掛けると疑っていたということか』
「多分……」

多分疑っていただろう。そうでなければライガール、トリプラ方面に来た帝国軍が何もせずに撤退するなどあり得ない。こちらは遭遇戦を装ったが向こうは遭遇戦では無いと疑っていたのだ。そして今では確信を抱いているに違いない。
『思うようにいかんな、もう少し油断するかと思ったが……。そうなれば付け込む隙も有ったはずだが……』

ビュコック司令長官が首を横に振っている。同感だ、帝国軍は思ったより隙が無い。そして驚くほど用心深い……。
『これからどうなるかな?』
「我々がゲリラ戦をしかけていると分かった以上、ハイネセンに直進する可能性は低いと思います。仮にハイネセンに向かったとしてもウルヴァシーを空には出来ません。かなりの兵力を置いて行くはずです。それでもハイネセンに向かう兵力は我々の倍は有るでしょう」

『倍か……』
ビュコック司令長官が溜息を吐いた。将兵、艦隊の錬度も入れれば戦力比は更に大きくなるだろう。到底正面からの決戦は出来ない……。
「帝国軍が採る方針は二つ
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