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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十九話  聞こえてくる声
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いたと思われます。帝国軍がゲリラ対策として補給基地の破壊を考えるのは当然の事。となれば彼らは補給基地を極秘で増やしたかもしれません」
十分有り得る事だがなんとも気の滅入る話だ。彼方此方で溜息を吐く音が聞こえた。トゥルナイゼンが悔しそうに唇を噛んでいる。

「イゼルローン要塞を落したのは失敗だったかもしれません」
思いがけない言葉が頭領の口から洩れた。頭領は沈痛な表情をしている。
「イゼルローン要塞が同盟側に有れば、フェザーン、そして地球はローエングラム公の暗殺を考えなかったかもしれない。要塞が同盟側に有りフェザーンが健在なら同盟は国内での防衛戦を考える事は無かったでしょう」

「しかし、それでは宇宙の統一は……」
ルッツ提督が言葉をかけると頭領は首を横に振った。
「一隊をイゼルローンに送りヤン・ウェンリーを牽制します。そして本隊をもってフェザーンを占領しそのまま同盟領になだれ込む。……イゼルローンでヤン・ウェンリーを釘付けにしておけば同盟はランテマリオで決戦し何も出来ずに終わったかもしれない……」

皆、沈黙している。時折視線を交わすが誰も喋ろうとはしない。誰よりも功を上げた頭領がその功を自ら否定している。その功が大きいだけに事態は深刻だと言って良い。
「しかし、それは仮定の話でしょう。実際にそう上手く行くかどうか……」
声をかけたが頭領は何の反応も示さなかった。俺の声が聞こえていたのだろうか?

「何より同盟軍に時間を与えてしまいました。そしてヤン・ウェンリーをハイネセンに戻してしまった。イゼルローンなら一前線指揮官ですがハイネセンに居たのなら防衛計画の作成に関与したでしょう」
「では今回の作戦はヤン・ウェンリーが立てたと?」
ロイエンタールの発言に頭領が苦笑を浮かべた。

「まともな軍人ならゲリラ戦等考えません。こんな事を考えるのは彼だけですよ」
なるほど、イゼルローン要塞攻略、そして今回のシュタインメッツ提督の敗北を考えれば確かにそうかもしれない。普通の軍人なら考えない事を仕掛けてくる。厄介な相手だ。

「メルカッツ参謀長、艦に戻りましょう」
「承知しました」
頭領が隣に居たメルカッツ閣下に声をかけた。戻るのか? そう思ったのは俺だけでは無いだろう。皆の視線が頭領に集中した。それに気付いたのだろう、微かに笑みを浮かべた。

「一応彼らを誘引する作戦案は有るのですよ、ただ上手く行くかどうか……。それに向こうが常識外れならこちらも突拍子もない作戦案です。少し考えないと……、メルカッツ参謀長、手伝って貰いますよ」
頭領の言葉にメルカッツ閣下が“はっ”と短く答えた。二人が歩きだす、皆が無言で見送った。

それを契機に自然と散会となった。艦に戻る途中、ルッツ提督、ファーレンハイト提督と一緒に歩く事になった
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