第四十五話 二度目の激突その十四
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「他のことは考えるつもりもない」
「それじゃあ今も」
「そろそろ行くぞ」
獅子はその全身に力を込めた。今にも飛びかからんばかりにその全身にバネを込めていることが上城にもわかる。
「いいな」
「うん、じゃあ」
上城も両手に持っている剣をあらたえて構える。そうして。
獅子が飛び掛ってきた。牙を剥いてそれで噛み千切らんとしている。その彼に。
上城は剣を突き出した。その突きには水の力が込められていた。
水と一体化した剣が獅子のその大きく開いた口を刺した。それによって。
獅子は口から後頭部まで大きく貫かれた、明らかに勝負はあった。
だがそれでも獅子は生きていた。そうして。
前足を使って剣を引き抜く。そのうえで着地してから一旦後ろに跳び鮮血が流れる口でこう彼に告げた。
「見事だ。腕を上げたな」
「そうなっているから」
「前に戦った時よりもさらにな」
そうなってい0るというのだ。
「強くなっている、俺の負けだ」
「口を開いていやから」
その牙で噛み千切る為に獅子はその口を開いていたがそれがだというのだ。
「そこに」
「突きを入れればか」
「大抵の人は倒せるよね」
「その通りだ。だが」
「だが」
「それが出来る者はそうはいない」
獅子は致命傷を負いながらもまだ目は死んではいない。毅然として四本の足で立ちそのうえで言うのだった。
「滅多にね」
「けれど僕は」
「それが出来る力量がある」
だから出来たというのだ。
「それ故にだ」
「僕の腕が上がったと」
「言った、そしてそれはその通りだ」
明らかに上城を褒め称えていた、そうした言葉だった。
「獅子が何故獅子か言っておこう」
確かに彼は怪物との間に生まれている。だがそれでも獅子だ、その獅子が獅子自身のことを話すのだった。
「それは誇りを知るからだ」
「誇り・・・・・・」
「相手を認めることもまたそれだ」
誇りだというのだ。
「獅子にはそれがあるのだ」
「若しそれがなければ」
「姿形がどうであろうともだ」
例えそれが獅子のものであろうともだというのだ。
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