第四十五話 二度目の激突その十三
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相手は獅子、その獅子はというと。
「ただのライオンじゃないわよね」
「そうだ」
その獅子から闘いを見守る樹里に答えてきた。獣の口から人の言葉を出してきた。
そして言うことはだ。こうしたものだった。
「俺は只の獅子ではない」
「怪物だから」
「ネメアの獅子だ」
それが彼だというのだ。
「俺は獅子と獅子から生まれてはいない」
「だから怪物なのね」
「獅子であっても怪物なのだ」
そうだというのだ。
「それが俺だ。父はオルトロス」
オリジナルの方の話であるがそうなるというのだ。
「母はエキドナだ」
「それでなのね」
「これでわかったな。俺はそうした獅子なのだ」
こう上城と牙を剥いて対峙しながら言うのだった。
「前には言いそびれていたな」
「そうだったね。それは聞いていなかったよ」
既に戦っている、だからこう言う上城だった。
「前はね」
「そうだ。そして今度こそはだ」
「勝つ」
「そうするつもりだ」
「怪物は何度でも出て来るんだね」
上城は何度も会っている獅子にこうも言った。
「そうなるな。そしてだ」
「そして?」
「一体しか出ないのだ。若しくは一種類しかだ」
獅子は上城にこのことも告げた。
「闘いにな」
「一種類だけ」
「多くの数の怪物達と同時に戦ったこともあった筈だ」
「うん、確かに」
「しかし複数の種類が出て来たことはないな」
獅子は上城にこのことを話していく。
「そうなっているな」
「そういえば今も」
「俺は一体しかいない」
ネメアの獅子は彼だけだというのだ。
「二体も三体もいないのだ」
「ということは」
「怪物との戦いはおおむね一対一で行なわれる」
「それはどうしてなのかな」
「俺にもそれはわからない」
怪物である彼でもだというのだ。
「どういう理由なのかはな」
「けれどそれでも」
「この戦いでの怪物はそうだ」
決して複数の種類は同時に出ないというのだ。
「そして剣士と戦うのだ」
「それは何か」
「何か。何だ?」
「闘技場での戦い、違うね」
また違うというのだ。
「それとはまたね」
「そうだな。少し違う」
「君達は何度も出て来て倒されてそれが僕達の経験になってきている」
「それがどうかしたのか」
「まるで。僕達が強くなることの助けになるみたいに」
「そうかも知れないがとにかく俺はそこまでは知らない」
獅子は上城を見据えたまま言っていく。
「そして知るつもりもない」
「つもりもないんだ」
「そうだ。怪物は戦えればいい」
それで充分だというのだ。
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