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万華鏡
第三十話 江田島その十三
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逃して」
「ロッテとのシリーズなんか」
 阪神ファンにとっては忌まわしい顔である、巨人に目の前での胴上げを許した位の。
「あの時は打てなくて打たれて」
「それで四連敗」
「こっちは四点位で?」
「向こうは三十点以上取られて」
 五人で話していく。
「しかもあれから優勝してないし」
「打線がねえ」
「ピッチャーはいいのに」
「それなのに」
 その四連敗のシリーズについて話す五人だった、そうした話をしながら。
 五人もまた東郷平八郎の絵を見た、そして言うことは。
「それじゃあせめてね」
「そうよね、私達だけでもね」
「この人みたいにはなれなくても」
「もっと真面目にな」
「生きていこうかしら」
「五省はどうでしょうか」
 自衛官は東郷の絵を見続ける五人にこれを紹介した。
「幹部候補生学校でも教えられていますが」
「ええと、五省ですか?」
「そんなのもあるんですか」
「要するに自分への戒めです」
 それだというのだ。
「それを学ばれてはどうでしょうか」
「ちょっと教えて頂けます?」
「そのことを」
「はい、それでは」
 自衛官はにこりと笑ってその五省のことを話したのだった、このことも五人にとっては素晴らしいことであった。
 五人は江田島を回り続ける、そのうえで人生を学び続けるのだった。


第三十話   完


                    2013・4・11
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