第二章 メルセニク編
滅び行く都市よ
月を目指した都市
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から距離を取った。
夫とドミニオは言った。つまり、あれがそうなってあぁなって……と嫌な想像をしそうになったところでエルミがため息混じりに言った。
「私は元人間さ。訳あって、この宝石の中にいるだけ」
シキはびっくりして、マジマジと宝石を見つめた。
不可思議に色を変える宝石に、シキは少し魅了されたようにじっと見つめた。この中に人がいるとは考え難いが、猫がしゃべっているなんて非常識な行動には合点がいった。
「さて、シキ。あんたは、これからドミニオと私と生活してもらうわね」
「……暇がないんじゃ?」
「それはあんたには、力の制御をしてもらいたいからよ。今までできなかった分、この一ヶ月でやって頂戴」
「まぁ、俺はどうでもいいんだがお前の力は強大すぎるからな。……安心しろ、暴走しそうになったら即刻たたき出してやる」
その言葉を聞いて、シキは確信した。
コイツとは仲良くできないな、と。
かくして、シキとドミニオとエルミの共同生活が始まった。……のだが、早速剄を暴走させたシキは、ドミニオからバスから蹴り落とされた。わずか一日という短期間だった。
*
「大分安定してきたじゃないの」
「そりゃ暴走するたびに蹴り飛ばされればこうなるよ」
ソファに寝転がりながらシキはエルミに言う。
あれから五ヶ月が経った。
その期間、シキたちは一度も都市に立ち寄ったことがなかった。近くを通ることはあったが。
この五ヶ月間、シキは自身を鍛え直していた。
寝転んでいる間も殺剄をしながら、剄を練り続けるという訓練をしていた。
ぶっちゃけ汚染獣も来ず、ずっと修行できずにいるのが苦痛だったという理由で始めたのだが。
殺剄の達人であるカナリスに師事してもらったことがあるシキはこの訓練をしたことがある。
だがシキレベルの剄を殺剄で抑えこむのは荒れ狂う濁流を止めるに等しい行為であり、唯一シキはカナリスとの修行だけは逃げ出した。
しかし、今はエルミによるリミッターが効いてるおかげと五ヶ月間、ずっと放浪バスという密室空間にいたせいかやることなくずっとその訓練だけをしていたのだった。
結果、シキは剄の制御が格段にうまくなった。五ヶ月前までは、今の全力を出せば垂れ流していた剄も今や、外部に垂れ流すことなく内部で処理することも可能になった。
カナリスクラスの殺剄をするにはもう少し年月が必要だが、いずれは出来るとシキは思っている。
制御できるようになったのは喜ばしいことだろうが、たまに制御を誤ったりしてドミニオと口論したことも一度や二度ではない。
「にしてもまだ着かないのか? えーと……えーと」
「白炎都市メルニスク……だ」
ドミニオはぶっきらぼうに言うが、彼自身も着かないことにイライラして
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