第二章 メルセニク編
滅び行く都市よ
月を目指した都市
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ーリンのような天才みたいだが、レベルが違いすぎる。もう魔法使いのように感じた。
「あとは服。……というか、さっさと着替えなさい。子供がそんな格好をしてるのは見るに耐えない」
そう言われてシキは、自分の服を見る。
ボロボロになった病院服、ところどころ焦げていて戦いに巻き込まれた哀れな子供のようになっていた。おまけに左腕部分は血まみれというオマケ付き。
シキは猫が指差した方に置いてある服を見つけて、それを着た。
「……サイズがぴったりだ」
「さらに伸縮自在、耐久性もあるから大切に使って、いいわね?」
アンダーシャツとパンツを穿いてから、シキはズボンを手に取る。
ジーパンのような感触だったが履き心地はこちらのほうが上だった。そして幾つかポケットが付いているジャケットを羽織ってジッパーを上げた。
最後に手の甲に錬金鋼用のシリットが付いた指なし手袋とこれまたスリットの付いたブーツのような靴を履いた。
戦闘用であることは明らかだった。腰に剣帯を巻くと、まるで着慣れた服のように心地よかった。
「気に入った?」
「……なんでここまでするんだ?」
シキは呟いた。
なぜ、ここまでするのか。その通りである。
シキとエルミはほぼ初対面である。知り合ってもいない人間を改造し、あまつは戦いやすくするためにここまでしてくれのは異常だ。
エルミは、またあくびをしながらこう答えた。
「あんたには借りがあるのよ。まぁ、今のあんたには身に覚えがないはずさ」
「あぁ」
身に覚えなんてない。こんな喋る猫に借りがあったら、死んでも忘れないとシキは断言できる。そもそも、喋る猫なんか見つけたら、孤児院の子供たちに持って行って遊び道具にするに決まっている。
「さて、そろそろ紹介してもいいわね? ねぇ、マイダーリン」
「そうだな、今、自動操縦に切り替える」
シキの耳に男性の声が聞こえた。
そして運転席の仕切りから、一人の太った男性が出てきた。おそらくは今まで運転していたのは彼だろうとシキは結論づけた。
荒い足音と共に運転席から歩いてきた男性は仏頂面でシキを見るとぶっきらぼうに言葉を紡いだ。
「相変わらず男か女かわからんやつだ」
「……初対面だが?」
馴れ馴れしい男性の反応に、シキは眉を曲げた。
「あぁ、ややこしいな、コイツは」
「しょうがないわ。この子はまだ知らないから」
猫は男性の足に駆け寄ると、身体をすり寄せながらニアと一声鳴く。
猫の方もそうだが、エルミの声が少し柔らかくなったのでシキは二人の中を察した。
男性は頭を掻きながらシキにふてぶてしく挨拶をした。
「俺はドミニオ・リグザリオ。エルミの夫だ」
「えっ!?」
その一言で、シキは身を引いて男性
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