十七話≪真≫
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空に黒点が有った
それは広大な空の広さからすれば小さい。けれどそれ自体の大きさは人を優に超えていた
羽を持ち、爬虫類の様な肢体を持って空を飛んでいた
無数に空中を舞うそれはこの世界の覇者、汚染獣だ
分類するならば、雄性体二期〜四期に該当するだろう
巨体が宙を飛び交うその下には一つの都市があった
休眠状態からの脱皮を済ませた汚染獣は、近くに来ていた餌の香りに誘われその都市を襲っていた
空を飛べるという利点を生かし、街中に降り立ったもの
外縁部に集まった武芸者に邪魔され、邪魔するそれらを押しつぶし食事をするもの
必死に武芸者たちが戦う中、その抵抗もむなしく一人、また一人と都市の守り手たちは殺されていった
レギオスに生きるこの世界での覇者は人間ではなく、人間は汚染獣という覇者から逃げるように生活している
いつ彼らの牙が自分たちに向けられるのか分からない、危険と隣り合わせの世界
それを体現するかのように怒号と悲鳴と怨嗟が叫ばれる中、その都市は只々大地の支配者に蹂躙されていた
都市の住民達は不幸だったと言えるだろう
本来、レギオスは汚染獣を避ける様にその進路を変え動き続ける
だが、汚染獣たちが休眠状態であったため、その都市は汚染獣たちに接近するまでそれを感知することが出来なかった
感知した時にはすでに遅く、目覚めた汚染獣たちにすぐさま追いつかれてしまった
また、日付も悪かったのだろう。その日、都市では祭事が行われていた
人々が多く出回り、混雑する中で告げられた緊急警報はパニックを生んでしまった
住民の避難に時間が掛かってしまった
警報が鳴り響く中、都市中に散らばる住民の避難の為に都市警は多くの人員を割かれた
結果、外縁部での食い止めに失敗。汚染獣を街中に入れてしまうという結果を生んでしまった
本来、対汚染獣戦は複数人でチームを組んで事に当たるのが常識。だが、避難が至る所で行われている以上、街中に入った汚染獣に対応できる武芸者の数は少数。住民を守りながら戦おうとした彼らは容易く殺された
街中で殺されば、住民を守るために街中に戦力を向かわせなければならない。けれどそれを行えば外縁部での戦力がさらに少なくなる
長い間その都市では汚染獣の襲来がなかったこともあり、戦術が纏まらず戦力の質が下がっていたこともある。悪循環を生んでしまった
その結果、都市は汚染獣の餌場に成り果てた
彼女の視界の中で血飛沫が舞い上がる
ギギギギギ……と汚染獣の口蓋が開き、鋸の様な歯をつけた暗い口腔が開く
巨体にぶつかられ、動かない体で痛みをこらえる女性の前でそれは開かれる。恐怖に固まる彼女の前で徐々にそれは近づき……バクッ、と口が閉じられる
赤い滴
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