暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission9 アリアドネ
(4) クランスピア社正面玄関前B~マクスバード/エレン港
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スニクの宿業を隠し続けたユリウス。

「お前も兄さんと同じか。俺に隠して、俺を遠ざけるためにわざわざ来たのか」
「ちょっと、ルドガー」
「手段の一つとして視野に入れてはいた。でも無理な目算のほうが高かったから、むしろアナタのサポートを主眼に置いて行動してきた」

 はっとする。キジル海瀑での変身に始まり、ユティの様々な言動が芋づる式に思い出される。

(どんな分史破壊任務でもユティは俺のそばにいた。エルを庇ってるんだと思ってた時も、エルじゃなくて俺を庇ってたとしたら? 空気を読まない撮影ばっかで注意すんのが大変だったのだって、ユティの気遣いだったら? アルヴィンに漫才みたいだって言われたけど、確かにユティと言い合う時は息が楽にできた。世界を壊す重苦しさを忘れられた)

 ――自分は、気づかないところで、ユティに救われてた?

 ぶつかるまで30センチと迫った少女と、今までの言動を重ねた瞬間、ルドガーは飛びずさった。ユティを我が子と勘違いした以上の羞恥心、さらに、目の前の少女への不気味さ。

 好意ではなく義務感で命をなげうてるユティが理解できなかった。

「分からなくていい。コレはユティ一人の問題。そんなことより、アナタが知るべきは別にある。今からとーさまが経験した、ココではない世界での『オリジンの審判』にまつわる話、する。聴いて。そして、選んで。誰もが救われる未来を」

 ――こうして、ユースティア・レイシィの、長く暗い人生劇場が幕を開けた。

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