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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission9 アリアドネ
(4) クランスピア社正面玄関前B~マクスバード/エレン港
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でも曲げなかった。だからユースティアも止まらない。間違った道をまっすぐ進む」

 ユティは黒いアルバムをバッグの中に片付け、その場を去るべく歩き出した。まっすぐ、背筋を伸ばして。







 時を経て、マクスバード/エレン港にてルドガーたちは集合した。

 この場には関係者、否、仲間が揃っている。トリグラフから足を運んだルドガー、エル、ミラ、ジュード。小一時間前までアルクノアのシージャック阻止に奔走していたローエン、ガイアス、アルヴィン。ジュードから連絡を受けて駆けつけたエリーゼとレイア。彼らの気配を察して顕現したミュゼ。

 そして。今回の集合の発端であり、ルドガーたちも知らない真相を語るべく立つ、ユースティア・レイシィ。

 人のいない埠頭を、等しく潮風が吹き抜けた。

「ユティ。話してくれるか。さっきの言葉の意味と、お前が知ってること」
「分かった。……長いようで短かったわね、ここまで」

 ユティはメガネを外した。ナイフじみた蒼眸が全員を見渡した。

「ワタシの本名はユースティア・ジュノー・クルスニク。18年後の未来に当たる『番外分史』から来た――――ユリウス・ウィル・クルスニクの実の娘よ」


 場の全員が大きな驚愕をあらわにした。

 だが、おそらく誰より驚いたのはルドガー自身だ。最初にユティが名乗ったタイミングがタイミングだったので、ルドガーはてっきりユティを自分とミラの娘と思い込んでいた。

(恥ずかしすぎて死ねる…!!)

 今すぐ顔を覆ってしゃがみ込みたいが、それができない事情がある。ルドガーは気力だけで耐えて平静を装った。

「お前……兄さんの子、なのか?」
「ええ。ユリウス・ウィル・クルスニクはワタシの父。ルドガーは叔父に当たる」
「ルドガーがユティのおじさん!?」
「ナァ〜!」

 呆然とする間に、ユティはルドガーの懐に入り込んでいた。見上げてくる蒼眸は、初めて会った時と同じで、無機質なのに鋭い。

「ワタシが列車テロの時にアナタに最初にかけたコトバを覚えてる?」


 ――“今すぐ列車から降りて。その子と一緒に。でないとアナタ、死ぬよ”――


 やけに確信的なくせにもったいぶった言い回しだと感じたのを思い出す。あの時は単にテロリストに殺されるという意味での、半ば見下した忠告だと受け取って言い返し、結果として列車テロに巻き込まれた。

「アナタがあの日、アスコルドの式典に向かう列車に乗るかがターニングポイントだった。死ぬよって脅してでもアナタに『降りて』ほしかった。クルスニクの宿業にまみれた世界から」

 この時、ルドガーはユティの後ろに確かにユリウスの影を見た。ルドガーを何年もクルスニク一族から隠し続け、ルドガーに何年もクル
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