黄巾の章
第22話 「……ご主人様って言うな」
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。あ、ありがとうごじゃいました……あう」
…………
「(ぼそ)やっぱり持って帰ろうかしら……」
「あう……?」
「な、なんでもないわ。じゃあね」
あぶないあぶない。
これ以上いると、本気で持って帰りたくなっちゃうわ。
盾二をものにしたら彼女も付いてくるのよね……
うん、やっぱり盾二は孫呉につれて帰ろう!
そう決ぃ〜めたっ!
―― 孔明 side ――
蟲声も静かな深夜。
すでに皆寝静まり、月は天頂に輝きを放つ時分。
私は二枚の毛布を持って、一人廊下を歩いている。
目の前には、盾二様のお部屋。
その前の扉には、馬正さんが座り込みながらうたた寝をしています。
この七日の間、馬正さんは、ほとんどここを動こうとしません。
昼夜に関わらず、扉の前で警護しています。
(いつもご苦労様です……)
私は馬正さんの肩に、そっと毛布を掛けました。
そして、扉を開けて中に入ります。
「あ、雛里ちゃん……」
中には雛里ちゃんが、机にもたれるように眠っていました。
今日一日、ずっと盾二様に付きっ切りだったのでしょう。
私と雛里ちゃんは、一日おきに盾二様の看護をしています。
どちらともなく決めた役割。
片方が仕事をして、片方が盾二様のお世話をする。
私は、もう一枚の毛布を雛里ちゃんの肩に掛けました。
(お疲れ様……雛里ちゃん)
そして寝台の幕を開けて中に入ります。
そこで寝ている盾二様は……穏やかな寝顔で休まれています。
「……どうして、目を覚ましてくれないんですか?」
思わず口に出てしまう言葉。
あの日……宛の黄巾が夜襲を仕掛けてきたあの夜。
『朱里! 俺は桃香を助けにいく! ここは任せた!』
その言葉を残して、馬正さんと一緒に馬で走り去る盾二様。
あの奇襲を擬態と見抜いたのは、私。
それに対して、すぐに行動を決めた盾二様。
その方針は間違いではないと、今でも思います。
でも……
(あの時、張遼さんと一緒に中を駆け抜けていくことだってできた筈です。そうすれば……)
そうすれば……一人で桃香様を追うなんてしなくて済んだはず。
そうしていれば……
ううん。
その時は……きっと愛紗さんと鈴々ちゃんを失っていた。
馬正さんは、本当にギリギリだったと話してくれた。
わかっています。
盾二様は、最善を選択したはずです。
でも……
でも……
「桃香様も、愛紗さんも、鈴々ちゃんも助かりました……でも、その代償が……」
義勇軍の壊滅と、目覚めない盾二様。
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