黄巾の章
第22話 「……ご主人様って言うな」
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綺麗になってきました。もうしばらくで治ると思います」
「そう……ありがとう。朱里ちゃんのおかげだね」
「いいえ……そんなことは」
私の言葉に、少し頬を染めて新しい葉に薬草を煎じた物を塗り、再度傷へと貼り付ける。
その葉を押さえながら、新しい包帯を巻きなおした。
「これでよし……あとは、いつもの薬湯を飲んでくださいね」
「うん……わかった。ありがとう、朱里ちゃん」
私は、腕の包帯を引っ掛けないようにして、上着を羽織る。
ふと、朱里ちゃんの視線を感じた。
「どうしたの……?」
「あ、いえ……その」
「ん?」
私は、微笑みながら朱里ちゃんに問いかける。
朱里ちゃんはモジモジとした後……顔をあげた。
「桃香様……雰囲気が変わられましたね」
「……そう?」
「はい、なんというか……」
「そんなことないよ……私は私だもん」
私は首を振って微笑む。
「いえ、その、なんというか……穏やかになったといいますか」
「……私、そんなに気性が荒かった?」
「いえ! いえいえいえ! ちがいましゅ! あう……」
「プッ……ふふ……」
「あ、あうぅ……しゅみましぇん」
カミカミの朱里ちゃんが、愛しく思えた。
「うーん。私は変わってないと思うけど……うん。でも、そうかな」
「?」
私の独りごちた言葉に、顔をあげた朱里ちゃん。
「たぶん……今までより、ちょっとだけ……何かに優しくなれたような気がする、かもしれない、かな……」
「桃香、さま……?」
よくわからない、といった顔でみつめてくる朱里ちゃん。
ごめんね、私もよくわかんないんだ。
この感情が何なのか……
この胸を暖かくする想いが、いったいなんなのか……
「うん。ごめん、わかんないや」
そう言って、私は――
誤魔化すように、微笑んだ。
―― 張遼 side 宛近郊 ――
「よーし! 今日の巡察はこれぐらいでええやろ! 戻るで!」
「「「応っ!」」」
ウチの言葉に、兵たちが応える。
「張遼将軍、このあたりの黄巾はほぼ駆逐した、と見て良いのでしょうか?」
撤収しようとする最中、一人の騎馬兵がウチにそう問いかけてくる。
「まーそう見てええやろ。せやけど、敵は黄巾だけやないで? これを機に街を荒そうとする賊もおるやもしれん! 気ぃ抜くなや?」
「ハッ!」
ウチの言葉に力強く応えて、列へと戻る騎馬兵。
ふう……
指揮官ってのは、ほんま疲れるもんやて。
(あれから七日……案の定、洛陽からの命令は宛の防衛と警備やった。月からの内々の書状じゃ、諸侯の軍は各方面の掃討作戦に
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