黄巾の章
第22話 「……ご主人様って言うな」
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お姉ちゃんが攫われた時に、何もできなかった……まるで動くことができなかったのだ!」
……くっ。
それは……それは、私とて同様だ。
鈴々……
「だから鈴々は思ったのだ!」
振るった蛇矛を、手前に引く。
そして、鈴々は天を見上げた。
「考え、悩み、苦しみながらも決めるのが、長女たるお姉ちゃんの役目。その補佐をするのが次女たる愛紗の務め。なら、末妹の鈴々は……どんなときでも元気に強くあって、二人を守るのが務めなのだっ!」
そう言って、『ハッ!』と蛇矛を天へと突き出した。
鈴々……お前は……
「鈴々は……鈴々は! お兄ちゃんを師と仰いで変われたと思っていたのに……まだまだ変われていなかったのだ! それが……それが!」
!?
鈴々が……泣いている?
「それがたまらなく、悔しいのだ!」
天に突き出した蛇矛を、そのまま地に叩きつける。
砂煙が上がり、固い地面にヒビが入った。
「鈴々……」
その言葉に、私の頬に涙が伝う。
お前は……本当に立派になった。
私は、お前を心から……誇らしく思うぞ!
「今はまだ……まだまだ弱いのだ! だから愛紗! 一緒に鍛えるのだ! もっともっと強く! 心も、身体も!」
「ああ……ああ! もちろんだ!」
私は、自身の涙を振り払う。
こんな怪我が何だ!
私とて……私とて鈴々の姉だ!
私自身も鍛えなおさねば……鈴々に追い抜かされてなるものか!
私は傍にあった訓練用の棍を手にして、中庭に下りる。
「治ってから、などとは言うまい! 今からやるぞ! かかってこい!」
「……わかったのだ、愛紗! 怪我してるから手を抜いてやるのだ!」
「ぬかせ! まだまだお前にやられる私ではない! これぐらいでちょうどいいのだ!」
「言ったなー!」
鈴々も、涙を振り払って蛇矛を構える。
「「負けるか(ないのだ)!!」」
私と鈴々、二人の裂帛の気合と共に。
互いの武具が重なり合った。
―― 劉備 side ――
「失礼します、桃香様はいらっしゃいますか?」
「はい……どうぞ」
私の言葉に、朱里ちゃんが扉を開けて入ってくる。
「失礼します……お加減はどうですか?」
「うん……大丈夫、だよ」
私は彼女に寝台の上から微笑んだ。
「そうですか……腕の薬を付け替えます。服を脱いでいただけますか?」
「ありがとう……お願いするね」
私は上着を脱ぎ……包帯の巻かれた右腕を露出させる。
朱里ちゃんは、それを静かに、丁寧に包帯をはずして……薬草を塗った葉っぱを剥がした。
「……うん。膿も収まりましたし、傷も
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