暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第五十二話
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ――《回廊結晶》特有の感覚を抜けると、視界が回復する前に、風が俺の肌を触るように吹いたのを感じた。

 徐々に視界が回復していき、まずは周囲の確認とばかりに周りを見渡すが……周りには何もない。
二年ぶりに見て感じることとなる、無限に広がっていく蒼穹しかそこにはなかった。

 立っているはずの場所に大地すらなかったが、代わりとは言っては少し違うものの、すぐ直下にとある建造物が見える。
いつだったか見た覚えのある、天空に浮遊する城のような建造物……そう、俺がこの世界に来ることになる前、現実世界であの浮遊城の姿を見た。

「アインクラッド……!?」

 そこにあった浮遊城は確かに、このソード・アート・オンラインというゲーム、そのパッケージに描かれていた舞台である《浮遊城 アインクラッド》そのもの。

 つまり今、俺がいるのは……

「なかなかに絶景だろう?」

 俺が今どこにいるか一つの可能性にたどり着いた時、前方から良く透き通る声が俺の耳へと届いた。
ここがどこか俺の予想が正しいならば、俺の他にこの空間にいるのは一人しかいない。

「ヒースクリフ……」

 先程から何ら変わらず、真紅の鎧を着込んだヒースクリフが俺と同じように何もない空間へと立っていて、あたかも空中浮遊をしているようだった。

「ようこそ、ショウキくん。百層を超えた場所――言うならばそうだな、《アインクラッド上空》へ」

 ここまで判断材料が揃っていれば誰でも解る、自分の予想が当たっていたことは大して驚きもせず、俺たちは二年間あの城で暮らしていたのだと考えると……奇妙な感覚に襲われた。

「アインクラッド上空、か……」

「落下したりはしないから安心したまえ。……しかし意外だな、てっきりキリトくんが来るとばかり思っていた」

 確かにここに立ってヒースクリフと向かい合うのは、自分より《二刀流》を使った勇者様の方が相応しいだろう。
だが、この世界で唯一無二のものを持っている者がこの場所に相応しいならば、俺とてキリト……勇者の真似事ぐらい出来る筈だ。

「キリトはこの先に必要な人間だからな……いや、必要ないか。ここでこのゲームは終わるんだからな」

 無論ヒースクリフに負ける気はなく、ゲームを『この先』まで続けさせる気はまるで無いが。

「良い気迫だな。では始めようか?」

「いや、その前に聞きたいことがある」

 これから殺し合いが始まるというのに、まるで散歩にでも行くようなヒースクリフの余裕そうな態度は、改めて彼がこのゲームの支配者だということを実感させる。

「聞きたいことは一つ。『どうしてこんなことを』……多分、プレイヤー全員が思ってることだ」

 この《浮遊城 アインクラッド》というゲームの世界に、人
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ