第二幕その十一
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第二幕その十一
「そうそう、それはですね」
「うむ、言ってみるのだ」
「一人の娘か女房ですかね」
ここでやっと思い出したのである。
「そんな優しい娘がいれば天にも昇る心地だよ。飲むものも食うものも全部美味くて王様だって何のその」
こう話していく。
「賢者さながら世を楽しみ極楽浄土にいる気持ち」
「それだけでいいのか」
「可愛い娘の誰一人おいらを好きなってくれないのか。一人位はいえもいいじゃないかな。さもなければおいらは悶え死ぬ」
そうなるというのだ。
「誰も愛してくれないならおいらは炎で悶え死ぬ。けれど優しい娘がいれば」
「わかった」
僧侶はここまで聞いて頷いた。
「ではその様にだ」
「本当ですか?」
「嘘は言わない」
こうしてであった。僧侶は静かに部屋を出てである、その代わりにだった。
「ここにいたのね」
「またあんたか」
パパゲーノはあの老婆パパゲーナを見て思わず声をあげた。身体をこれでもかと伸ばしそのうえで心臓が飛び出そうな程口を開けている。
「何で出て来たんだ!?」
「だから恋人にって」
「有り難い幸せだ!」
また飛び上がる彼だった。
「だから何でこうなるんだよ!」
「若しあんたが永遠に私に忠実でいると約束するなら」
「それは?」
「あんたの女房がどんなに優しくあんたを愛するか見せてあげるわよ」
「それはまた」
パパゲーノはこのうえなく嫌悪感を露わにさせて言葉を返した。
「有り難い幸せだ」
「そう思うじゃろう」
「うん、全然」
全くというのだ。やはり素直である。
「全くね」
「じゃあ縁結びの印に手を」
「遠慮させてもらうよ」
如何にも嫌そうな顔での返答だった。
「何があってもね」
「躊躇ったらずっとここにいることになるよ」
「それはもっと勘弁だよ」
まさにあれも嫌、これも嫌だった。
「本当に餓え死にじゃないか」
「毎日食べるものはパンと水だけじゃよ」
「餓え死にしないだけましか!?」
「お友達も恋人もなく」
パパゲーナの言葉は続く。
「世の中から何時までも見捨てられたままで暮らさないといけないのよ」
「そりゃ何て地獄なんだ」
「わかったわね」
「それなら婆さんでもいい」
彼もこう言うしかなかった。
「もうね。約束するよ」
「約束するんだね」
「そうだよ。もっと奇麗な娘が出て来るまでね」
「よし、誓うね」
「誓うよ」
心に思っていることはそのまま言ってしまった。
「是非ね」
「よし、それなら」
「何てこった」
パパゲーノはパパゲーナのその手を取ってから顔を背けて。悲嘆そのものの顔で言うのであった。
「何でこんなことになったんだろう」
しかし彼がパパゲーナを見ていない間にである。彼女はその
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