第三十八話 疑惑
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、同盟軍がゲリラ戦を展開するとすれば、同盟政府は我々の前に為す術も無く降伏する事になるでしょう。その時、同盟政府首班は叛徒共の首魁として扱われる事になります。一番厳しい処罰を受ける事になる……」
「だから各星系は政府に対して文句を言えない、反乱軍を離脱する事も無く大人しくしている……」
「自らを犠牲にする事で反乱軍を一つにまとめている……」
ローエングラム公、そしてキルヒアイス提督の言葉に彼方此方から呻き声が起きた。黒姫の頭領の懸念は十分に根拠が有る。厄介な事態になったのかもしれない。
沈黙が落ちた、皆考え込んでいる。天井を見る者、目を閉じる者、腕を組む者、そして時折太い息が漏れた……。
「閣下、頭領の推測が正しいかどうか、確認をすることは出来ないのでしょうか? それなしでは今後の方針を決められないと思いますが……」
総参謀長の進言にローエングラム公が“ウム”と唸った、しかし後が続かない。難しいのだ、場合によってはハイネセンまで行って初めて分かるという事も有るだろう。
そしてもう一つ問題が有る、ゲリラ戦ではゲリラの位置を捕捉し攻撃場所を予想することが極めて難しいのだ。ゲリラに前線は無い、どこから現れるか、どんな手段で攻撃するかの選択肢は常にゲリラ側が持つ。つまり反乱軍がゲリラ戦を仕掛けてくればこの戦争における主導権は反乱軍が持つことになる……。
皆が沈黙する中、案を出したのは黒姫の頭領だった。
「閣下、艦隊を動かしてみては如何でしょう」
「艦隊を動かす? ハイネセンにか?」
公が訝しげに問い掛けると頭領は首を横に振った。
「いえ、ガンダルヴァ星域の周辺を哨戒させてはどうかと……。ライガール、トリプラ、タッシリ、バーミリオン、ランテマリオ、五個艦隊を動かし哨戒させるのです。此処には一年分の補給物資が有ります。哨戒活動はおかしなことではありません」
公が大きく息を吐いた。
「喰い付いて来るかな?」
「分かりません。しかしこのウルヴァシーの補給物資は同盟軍にとって目障りな存在のはず、出来れば破壊したいと思っているはずです、注視はしているでしょう。こちらが動いた時、相手はどう動くか……」
頭領の言葉にローエングラム公が頷いた。
「なるほど、石を投じてみるか……」
「はい、同盟軍がゲリラ戦を仕掛けてくるつもりならこの機会を逃がすとは思えません。向こうとしても出来る事ならハイネセン陥落は避けたいでしょう」
「……良いだろう、艦隊を動かしてみよう。ハイネセンに行かずとも反乱軍の狙いが確かめられればそれに越した事はない」
出撃か……、会議室に声にならないざわめきが起きた。皆が顔を見合わせている。
「戦闘は避けさせてください、同盟軍を発見した場合はすみやかに撤退するべきかと思います」
「我らが負けると
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ