第三十八話 疑惑
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は有り得るとは思いますが、正規艦隊を使ってのゲリラ戦など……」
ミッターマイヤー提督が困惑を浮かべながら頭領に問いかけると皆が頷いた。出来れば正面決戦をという願望も有るだろう。相手が頭領でなければ“馬鹿げている”、“有り得ない”と否定する人間も出たかもしれない。視線が頭領に集中した。
「有るのか?」
公が問いかけると頭領が首を横に振った。
「確証は有りません。しかし気になる点が有ります」
嫌な予感がする。俺だけではあるまい、皆が不安そうな表情をしている。頭領の読みの鋭さは十二分に味わってきた……。
「無防備都市宣言、あれの持つ意味を過小評価したのかもしれません」
「過小評価? どういうことだ? 抵抗する力が無ければ無防備都市宣言はおかしなことではあるまい」
「……」
ローエングラム公が訝しげに問いかけたが黒姫の頭領は厳しい表情をして沈黙している。会議室の空気が重くなった。
「頭領……」
総参謀長が声をかけた。頭領がチラッと視線を総参謀長に向け、そしてローエングラム公に向けた。そして深い溜息を吐いた。
「自由惑星同盟では主権は同盟市民に有ります。帝国で言えば平民に有るのと同じです。統治者は彼らによって選ばれる。それだけにハイネセンの同盟政府は同盟市民の動向に敏感にならざるを得ません」
「……」
「同盟軍がハイネセン付近での決戦を考えるとすればそれ以外の星系は見捨てられることになります。彼らの間から政府は自分達だけ助かろうとし我々を見捨てようとしている……。そう非難が出てもおかしくは有りません。場合によっては同盟から離脱し中立、或いは帝国に降伏してもおかしくは無い。そうなれば自由惑星同盟という国家は崩壊する事になります……」
「なるほど」
公が頷いた。確かに帝国と反乱軍では国体が違う。反乱軍では星系の支配者は平民達を守るために動くと言う事か。帝国ならどうだろう、領主は逃げ出し平民達は侵略者を新たな支配者として受け入れるに違いない。侵略者を追いだした後領主は何食わぬ顔で領地に戻るだろう。平民達も同じように迎え入れるに違いない。周りを見渡した、頷いている人間が何人か居る。
「以前、作戦会議でミッターマイヤー提督が言った事は間違っていないのです。同盟政府がハイネセン以外の有人惑星を守る姿勢を見せるとすればランテマリオでの決戦しかない。しかし現実には同盟軍は決戦をしていません。それなのに各星系は無防備都市宣言のみで同盟に留まっています……」
「……余りにも整然とし過ぎている、頭領はそうお考えなのですね」
総参謀長の問いかけに頭領が頷いた。
「各星系が無防備都市宣言のみで同盟に留まっているのはハイネセンが自分達だけを守ろうとしているのではないと知っているからではないでしょうか? このまま帝国軍が進めば
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