病み六花の自己中が解放される時・前編
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くる気配がなければメールを再び送り直す。
(マナ、マナ……)
三十分が過ぎた。
なおも返事もなければ折り返しの電話もなく、人混みからマナが現れる気配はない。
(どうして来てくれないの? いつまで待たせるの?)
グスン。
悲しくなる。
目から溢れかけるものが視界をぼかし、目じりを濡らした。
(私が何か悪い事でもしたの? マナのこと怒らせた? だから来ないの? ねえマナ、あなたは本当にどこにいるの? ねえ、今どこなの? マナぁ……!)
秒を刻めば刻むほど、六花の胸の内側で、マナの笑顔が色濃くなっていく。一緒に笑いながら新しいお店へ行って、今頃は可愛い服を探しているはずなのに、どうして自分はまだこんな場所にいるのだろう。
待つばかりの自分が惨めになってきた。
ちゃんと待ち合わせ通りに来てくれていれば、まずはマナのエスコートでお店まで案内してもらい、そしてマナに選んでもらった洋服を試着しているはずだった。「どう? 似合う?」なんて尋ねて、「うん。可愛い!」なんて言ってもらう。そんな瞬間を、約束を結んだ時から今日の今まで夢見ていた。
四十分を過ぎた。
洋服のあとはどこかで一緒に食事をして、お互いの皿からおかずを分け合ったり、デザートを一口ずつ一緒に食べたり、なんて考えていたのに。
それなのに、まだ来ない。
(マナ、マナ、マナ……)
時間が経てば経つほど瞳が濡れて、まぶたの隙間から雫がこぼれ落ちそうになる。耐えがたいほどの気持ちを抱えながら、ハンカチで何度も目元を拭いて、それでも六花はマナを待ち続けた。
五十分が過ぎた。
(もう、来ないの? マナ……)
やがて諦めにも似た気持ちが沸いてくる。
それでも六花は、やはりマナを待ち続けた。
このまま一生マナが来ないのだとしても、自分はここで待ち続けるのだろうか。いっそ怒って帰ってしまえれば楽なのだろうが、もしその後になって、入れ替わるようにマナがやって来たらと考えると、やっぱり帰ろうにも帰れない。
いや、帰りたくないのだ。
マナと一緒に、約束通りにお店に行きたい。
遅くなっても構わない。
行きたい。
ポツン、
雨が降ってきた。
やや大きめの粒がパラパラと降り注ぎ、六花の髪を、服をしっとりさせていく。やがて水気を吸って、服も髪も重くなり、前髪の先から水滴が垂れていった。
(傘、ないや)
天気予報では晴れだったはずなので、折りたたみも持っていない。
けれど、近くには屋根もない。この待ち合わせ場所を離れれば、マナが来た時に自分を探させる手間を与えるだろう。
だから、雨だろうと待ち続ける。
寒くなって、だんだん体が冷えてきたが、それでも待ち続けた。
しかし……
…………
……
とうとう一時
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