悪夢
[4/4]
[9]前 最初
地上が地殻の変動期に入り、全ても原発が壊滅的打撃をうけ、放射能が地球に蔓延した1.5億年前の出来事である。
そして最近読んだ新聞の片隅に掲載されていた記事のことを思い出した。そこには「先祖帰り症候群」という精神病について書かれていた。多くはストレスが原因らしいのだが、自分が人類とは異なる容姿をしていると思いこんでしまい、極度の人間恐怖症に陥ってしまうという。もしかしたら、自分も出世競争のストレスからその精神病になりかけていたのかもしれない。
そう思った途端、妻の顔が、人間そのものだということに気付いた。綺麗な鱗はまるで真珠のような輝き、その一枚一枚の重なり具合は、持って生まれた血筋の良さを物語っている。背びれは優美な流線型を描き、尻の上でピンと跳ね上がっていて、僕の欲情を誘う。
僕は漸く気持ちも落ち着き、今朝の狂乱を苦笑いしながら思い出していた。すべては、論理的に思考を積み重ねてゆけば、何のことはない。一時、悪夢を見ていたに過ぎなかったのだ。
ウオコン(注1)が心地よい水流を頬に送っている。この装置の普及が海水温の上昇を招き、環境を破壊すると評論家は言う。彼らは常に大袈裟だ。僕は心地よい流水を受け頬を緩めた。そしてあらためて妻の美しいウロコに見惚れていた。
(注1)ウオコンはウオータコンディショナーの略
[9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ