暁 〜小説投稿サイト〜
虚の王
第1話狂信者
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
 その空間の名は虚圏。悪しき霊である虚《ホロウ》が住まう空間。そこには何も無く、あるのは枯れた木のみ。だが今は虚は一匹もいない。

 砂塵舞う中虚圏には可笑しい光景がそこには起こっていた。

 人型の黒い炎が時々形を変えて両膝を付き、苦しんでいるように見える。

『痛い痛い痛い。助けてくれ、助けてくれ。嫌だもうこんなの嫌だ、嫌だ、助けてくれ」

 空間が歪み、まるで硝子に罅が入り割れるかのように空間が割れていく。
 黒い炎は徐々に膨らむ。まるで水を限界にまで入れられた水風船のように。そして、破裂する。黒い炎は爆発し周囲が吹き飛ぶ。

 黒い煙が立ち込め視界が完全に遮られる。砂漠にはポッカリと穴が開き、空間の罅は完全に直る。 
 そして黒い煙が晴れ、視界が回復すると先程まで苦しんでいた人型の黒い炎はおらず、いるのは男だった、仮面を付けた。

 男は何を思っているのか分からず、ただただ砂漠を見ている。 

「何も無いな。本当に何も無い」

 歩き出し、まるで親しい者に喋りかけるかのような口調で。

「これでは駄目だ、駄目駄目だ。やはり『城』が欲しい。色の無い、無色な真っ白な城が欲しい」

 立ち止まり男は口を開く。

「我は王。我は神。我は虚を統べる者なり」

 空間が歪み、罅が入り割れる。割れた所からは真っ白な『何か』の表面が見えてくる。
 それは真っ白な穢れの知らない純白な少女のように真っ白な表面の白だった。 城が完全に、その姿を現し完全に城が虚圏に現す。

「それと部下も欲しいな、我に忠実で盲信する部下が欲しい」

『虚達よ、我を崇め神と疑わぬ虚達よ生まれよ。生まれ堕ちろ』

 パキパキと言う音を響かせ空間が割れ空間に穴が開く。その穴は真っ黒でまるで冷たさも温かさも感じさせない闇のその先の闇を感じさせる。
 そして、その穴から『悪霊の軍団』が姿を現す。
 悪霊達《虚》は穴から出て来ると男に片膝を付き、まるで絶対なる支配者即ち神に己の全てを捧げた狂信者のようである。そして狂信者達は神が声を発し自分達に命令をするまで動こうとしない。

「お前らに命令を言おう」

 狂信者達の空気が変わり一気に張り詰める、気の弱い者だったら気を失ってしまうだろう。

「喰らいあえ、隣にいる同族を、後ろに、前に、斜めにいる『同族』と言う『同族』を喰らい尽くせ。それが命令だ。理解できたか?」

 まるで幼子に優しくあやすように狂信者達に残酷な命令を下す。

「「「YES!! YES!! YES!!」」」
 狂信者達は一斉に立ち上がり叫ぶ。

「ならば喰らいあえ!! 肉を噛み千切れ!! 血を啜れ!! 噛みつかれたなら噛み返せ!! 肉を抉られたなら抉り返せ!! さぁ食事をしよう」

「「
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ