第12話「キャンパスを歩く」
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布越しでもわかり、腰のくびれさえも確認できる。
「もっと大きいのは?」
「ありませんよ? それしか」
わざと、なのだろう。
サイズの小さい、丈の短い検査着を着て、大学病院へ入るまでのあいだ、こんな格好で一般大衆の中を歩かされるのだ。
「行くぞ麗華」
担任と、医師がそれぞれのドアから降車する。
麗華も降りるように促され、ありえない格好のまま降りることとなった。せめて脱いだ制服を持っていくだけでもしたかったが、余計な持ち物は持つなと言われてしまい、恥ずかしい上に心細い気持ちで大学の敷地内へ入っていく。
担任と医師の二人に続いて、麗華は学生の溢れかえるキャンパス内を歩いた。
「うわぁ、なんだ? あの子」
「エっロ!」
当然、あまりの格好に注目が集まる。
道を行き交う学生達の視線が、麗華のいやらしい部分へ集中する。気をつけなければ、歩くための太ももの稼動だけでも丈が捲れて、多くの人間に中身を見られてしまいそうだ。
麗華は前と後ろの裾を掴み、下へ引っ張るようにして中を見せまいと守りを固める。それでいて耳まで赤く染めながら、麗華は思い切り下を向き、地面を見ながら歩いていた。
しかし、そんな恥じらいの伺える動作がさらに学生を沸き立たせ、携帯やスマートフォンが麗華へ向けられる。
――まさか撮る気じゃ――!
麗華は咄嗟の判断で顔を下げ、顔だけは撮影からガードする。だが、守りようのないボディは、布の上からとはいえ何枚も撮られていた。動画に撮る学生さえもいた。
――こんな姿まで残されるなんて。
麗華は歯噛みする。
「ほらもっとズームしろって!」
「近づいてみるか?」
撮影に盛り上がる声がしてくる。
「ヒュー!」
口笛を吹いてからかってくる。
周りにいる全員を殺してやりたいほどの沸々とした気持ちが沸きあがり、麗華は横目で強く男をにらんだ。
パシャ!
その怒りを剥き出そうとしながらも、睨む目つきの裏側にやはり恥じらいが見て取れる表情を撮影された。
こうなると、もう怒りより悔しさが上回る。
こんな格好でさえなければ、撮られなくていいのに。
竹刀でもあれば、剣道で鍛えた素早さを活かして叩きのめしてしまえるのに。
「靴下だけは履いてるんだねぇ」
「太ももまぶし〜!」
男達は容赦なく嫌な言葉を投げてくる。
彼らに怒りを向けたとしても、みっともない格好の麗華が気を強くすればするだけ男は喜ぶに違いない。言葉と撮影行為と視姦による、集団からのある意味でのリンチが相手では、さしもの麗華も肩を縮めて震えながら耐えるしかできなかった。
こうして歩いているだけでもつらいのに、医師がさらに追い討ちをかける。
「おっと、いけない。ペンを落としてしまいました」
さもわざとらしく、ボー
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