第1話「剣道少女、麗華」
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冗談のように言い交わし、お互いに笑い合う。
「そこでです。桑原先生――黒崎麗華は全国大会に出るわけです」
「ええ、何度も聞きました。素晴らしいものです」
「そう。全国です。ならば、あなたにできることが何かあるのでは?」
「ワタシにできること。ふむ――」
一瞬、彼は何を言っているのだろうと思った。
あからさまに『大会』を強調してくるので、そこにどんな意図があるのだろうと読みかねていた。
しかし、私は気づく。
確かにあるのだ。
医師であるワタシにこそできることが――。
だが。
「――いえ、先生。一つ問題があります」
ワタシは行った。
「何でしょう? 桑原先生」
「オリンピックくらいの大きい大会でなら、確かに『ソレ』は行われています。ですが、今回の大会は全国とはいえ中学生が出場するものです。果たして、我々の思惑は叶うものなのでしょうか」
ここまで語ると、担任はニヤリとする。
何か対策があるとでも言うのだろうか。
「お任せ下さい。例はあります。私が大会運営に掛け合います」
「あなたが、ですか?」
果たして問題にならないのだろうか。麗華の所属する学校側から、それも担任が『ソレ』を行うように掛け合うなど、うちの生徒を疑って下さいと言うようなものだ。そんなことをして大丈夫なのだろうか。
「大丈夫です。言い回し次第で何とでもなりますよ」
担任はほくそ笑む。
「そうでしょうか」
「実は運営者の中に知り合いがいましてね。彼も中学生の女子に興味を持ってるんですよ。ねえ、何とかなりそうでしょう?」
なるほど、根回しに心配は必要なさそうだ。
子供相手に『ソレ』を行うのは問題、という考えもあるが、逆に言えば相手が子供だから押し通してしまえるとも言える。
ならば、建前を付けて押し通すつもりなのだろう。
「あなたは素晴らしい教師です」
ワタシは担任を褒め称えた。
「あなたこそ、素晴らしい医師ですよ」
「先生やあなたのその知り合いという方にも、必ずや良いものをお見せします」
「約束ですよ? 桑原先生」
「もちろんです」
ワタシと担任は握手を交わし、結んではならない協定を結んだ。
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