第1話「剣道少女、麗華」
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替え、ジョギングに出た。
朝は涼しい。陽射しの弱い時間帯に体で風を切っていると、体の表面が涼やかになる。早朝のジョギングはいつも気持ちが良く、日々の鍛錬の中でも心晴れるメニューだった。麗華は一時間かけて住宅や公園のあいだを走り回り、最初の玄関に戻る。
部屋に戻るとセーラー服に着替え、麗華は早々に学校体育館へ向かった。
そこには既に数人の部員が集まっており、それぞれの練習に励んでいた。
後輩は三年生である麗華に気づいて大きな挨拶をし、円で囲むようにして麗華の周りに集まっていく。
「それじゃあ、今日の練習は――」
朝のメニューを告げ、それぞれの部員を打ち合いの練習につかせた。
麗華は後輩の中でも一番強い男子生徒を相手にしたが、激しい足捌きからなる連続攻撃を全て受けきった。ほんの少しの挙動からでも、相手がそこからどんな動きをしてくるのか、どういう仕掛け方をするのかが何となくイメージできてしまう。
十手も二十手も先を読める麗華にとって、いかに強い後輩でも相手にならなかった。
麗華はある一瞬の隙を見極める。相手の面打ちに向けて自分の竹刀を打ちつけ、さらに重心を相手へ押し付けるようにして弾き飛ばす。相手が後ろへよろめくところへ、即座に突きを入れて一本取った。
まだまだ、これでは鍛錬が足りていない。
もっともっと強くならなければ――。
*
「――自分に甘い人間ほど弱さに溺れる。どうして強敵ごときに恐れをなすのですか? 勝てない相手がいるのなら、それ以上に力をつければいいはずです」
一年生だった当時、黒崎麗華は先輩へ向けてそう語ったらしい。
これは顧問から聞いた話だ。
かつての剣道部は弱小で、全国大会など夢のまた夢だった。一度は都大会までは進んだものの、都大会の時点でも高いレベルについていけず、あえなく敗退している。一つ上へ行っただけで化け物がいたのだから、全国大会は魔物の巣窟に違いない。そう感じた昔の先輩達は戦意を喪失して、やる気を失ってしまっていた。
地区大会までならともかく、それ以上の大会のレベルはよっぽどのものらしい。
しかし、そこへ新入生当時の黒崎麗華が現れる。
彼女はやる気のない先輩に腹を立て、こう言い放った。
「ならば全国の常連である隣の中学に殴り込みます。もし私が負けることなく帰ってこれたなら、もう一度頂点を目指すと約束して下さい」
そして、大きく出た言葉通りに麗華は実際に強豪校へ挑戦する。道場破りのように勝負を挑み、エースを相手に全勝した。同じ一年や一つ違いの二年生にはまるで苦戦せず、三年の男子が出てきてようやく少しは苦戦する。だが、それでも最後には麗華が勝ちを取り続け、圧倒的な実力を見せ付けた。
黒崎麗華がいれば全国にいけるかもしれない。
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