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魔笛
第一幕その十二
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第一幕その十二

「あの方だな」
「まさか夜の女王を御存知なのですか?」
「御存知も何もザラストロ様の奥方だった」
「嘘だ、それは」
「嘘ではない」
 タミーノを見据えて毅然と述べた。
「それはだ。嘘ではない」
「それではパミーナは」
「パミーナ様がお生まれになって喧嘩をされてだ」
「別れたのですか」
「我等は昼の世界にいる」
 それが自分達の世界だというのだ。
「しかしあの方は夜の世界を治めておられる」
「昼と夜が」
「そう、昼と夜だ」
 その二つの世界の対立であるというのである。
「パミーナ様は今まで夜の世界におられた」
「母親の場所だから当然なのではないのですか?」
「それは違う。世界は昼と夜からなる」
 そうだというのだ。
「夜の世界だけにいてはならないのだ」
「昼の世界にもですか」
「左様、いなくてはならない」
 僧侶はこうはっきりと述べた。
「だからだ」
「ではタミーノは」
「お父上のところにおられるのだ」
「しかしそれは」
「まずは待て」
 タミーノへの確かな言葉だった。
「友情の手が貴殿を導きこの聖域に永遠の絆で結びつける刹那に」
「刹那に?」
「貴殿も昼の世界を知るのだ」
 僧侶はこうも彼に告げた。
「わかったな」
「一体何が」
「若者よ」
 ここで寺院の中から声がしてきた。
「もうすぐに、さもなくば決して?」
「さもなくば、決して!?」
 タミーノはそれを聞いて眉を顰めさせた。
「そしてパミーナは」
「あの方はまだ生きている」
「それは間違いない」
「そうか、それなら」
 タミーノはそれを聞いてだった。意気を取り戻して述べた。
「全能の神々よ、御身等を讃えて一つ一つの音に僕の感謝を表せられれば」
 言いながらその笛を吹いた。
「今ここに湧き出るままに御前の魔法の調べは何と力強いのか」
「その魔笛もまた」
「貴方を導いてくれるもの」
「優しい魔笛よ」 
 タミーノは声の中で言う。
「御前が鳴り響くと」
 ここで何処からか獣達が出て来た。ライオンや豹もいれば象にキリン、そしてゴリラと様々な動物達である。その彼等がだ。
 彼等はタミーノを囲んで踊りだす。彼はその獣達を見てさらに言うのだった。
「獣達でさえ喜びを感じる。けれどパミーナは」
 まだ見ぬ彼女への想いだった。
「この笛を聴いて欲しい。君は何処にいるのだろう」
 するとここでだった。パパゲーノの笛の音を聴いたのだ。
「おや、あれは」
 それに気付いてであった。
「パパゲーノの笛の音。しかも明るい」
 そこまで聴き取っていた。明るく踊る獣達の中でだ。
「パミーナに会ったのかな。だとすれば」
 そこに向かうのだった。そしてその二人は。
「早く会いましょう
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