第百二十七話 五カ条の掟書その六
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「だからよかったのですが」
「しかし今はですな」
「崇伝殿と天海殿だけです」
「まさにお二人だけです」
「しかもあのお二人は」
「それがしの思うことでありますが」
明智はこう前置きしてから話す。
「このままでは上様も幕府も」
「危ういですな」
「このままでは」
「ひいてはそれが天下の乱れにもなります」
最早幕府に力はないが権威はまだある、その権威がおかしくなってしまえばというのだ。
「それだけはあってはなりませぬ」
「その通りですな」
ここで細川も明智に同意して言ってきた。
「このまま公方様がおかしなことになり続けていれば」
「はい、天下の乱れにつながります」
「再び天下が乱れてはなりません」
「そうです、朝倉殿とのこともですが」
明智はこのことも危惧して言った。
「このままでは織田家と朝倉家の戦になります」
「朝倉義景殿は非常に誇り高い方ですからな」
和田が義景のことを言った。
「ましてや朝倉家と織田家のことを考えれば」
「本来は公方様が仲介されるべきです
天下のことを考えればだというのだ。実際に義昭は以前はその権威を使いたがってのこととはいえ両家の仲介を進んでしようとしていた。
だがそれがだというのだ。
「全く逆のことをされておられるので」
「それで明智殿」
和田が深刻な顔で問うた。
「若し織田と朝倉が戦になれば」
「その時ですか」
「我等はどうすべきでしょうか」
「義に従えばよいでしょう」
明智は和田にこう答えた。
「その場合は」
「義ですか」
「どちらに義があるか考えればいいのです」
明智は淀みなく言う。
「それがしはそう思います」
「成程、義ですか」
「これで答えは出ていると思いますが」
「確かに」
和田は明智の今の言葉に確かな顔で頷いた、そして細川や他の幕臣達もだった。
「ですな、それではです」
「我々としましては」
「それしかありませぬ」
「右大臣殿と共に参りましょう」
「越前まで」
「それがしもです」
はじめに言った明智もだというのだ、その言葉は確かなものだった。
「越前まで行きます」
「その時はですな」
「そうして」
「戦います。朝倉家はこれで降参するか」
滅ぶか、だがここではそこまで極端なことはあえて言わなかった。
「戦はすぐにかたがつきましょう」
「若し早くつかねば」
細川が万が一そうなればと問うてきた。
「どうなるでしょうか」
「その場合はですか」
「厄介なことになるのでは」
「その場合はそうなります」
明智も言う。
「若し右大臣殿が朝倉攻めをしくじられれば」
「その時は長い戦になるやもですな」
「はい、他の家も動くかも知れませぬ」
家は織田と朝倉だけではない、武田や上
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