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八条学園怪異譚
第三十一話 マウンドのピッチャーその十一
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「お酒もおつまみもあるわよ」
「いや、そこに行ったらセクハラされますから」
「遠慮させてもらいたいです」
「何よ、つれないわね」
 既に出来上がっている顔で二人に言う。見れば今も一升瓶に直接口をつけてラッパ飲みをしている。一升瓶の中の酒が勢いよく消えていっている。
「同じ高校の先輩後輩の中じゃないの」
「レズを公言してる人の傍にいたくないですから」
「セクハラしても構わないなんていう人は」
「女の子同士はセクハラにならないからいいじゃない」
 あくまでこう言う茉莉也だった。
「だったらいいでしょ」
「よくないです、そっちは遠慮します」
「一塁側にいますから」
「ほら、やっぱりこう言うじゃない」
 茉莉也の右隣にいるのっぺらぼうが彼女に言った。
「二人共真面目だからお嬢のセクハラ攻撃は駄目なんだよ」
「只のスキンシップじゃない」
「お嬢の場合は只の、じゃないから」
 妖怪達もよくわかっていることだった。
「胸とか足とかいつも触るじゃない」
「お尻とか?」
「それおっさんがやったら絶対に捕まるよ」
 世間は男には厳しい、よいことに。セクハラ親父は許される存在ではない。
「女の子だから捕まらないけれど」
「だから女の子同士で何処が悪いのよ」
「度が過ぎてるんだよ、本当に」 
 酒を飲んだ茉莉也は、というのだ。
「もうちょっと慎んでね」
「やれやれね、世知辛い世の中ね」
「お酒を飲むと余計に酷くなるんだから」
 お酒さえ飲まなければ、ではなくこうなるのだった。
「とにかく無理強いはよくないよ」
「じゃあ今はここでこのままってことね」
「野球観戦楽しもう」
 のっぺらぼうは茉莉也に言った。
「今はね」
「まあ嫌がるのなら仕方ないわね」
 茉莉也ものっぺらぼうがあまりにも強く言うので納得した、それでだった。
「じゃあいいわ、ここで大人しく野球観戦するから」
「別に抱き寄せたりしなかったらいいですけれど」
「セクハラしなかったら」
 二人はその茉莉也に彼女達なりの妥協案を出した。
「三塁側でも」
「一緒にいましても」
「本当?じゃあ来て」
 茉莉也は二人の妥協案に乗った、それでだった。
 日下部と三人でその三塁側の土手に来た、するとだった。
 茉莉也は二人に杯は出したが何もしなかった、それで二人も驚いた。
「あれ、何もされないんですか?」
「特に」
「約束だからね」
 今度はチョコパンをかじりながら言う茉莉也だった。
「何もしないわよ」
「そうなんですか、約束だから」
「それでなんですか」
「約束は守らないと駄目でしょ」
 このことは真剣に言うのだった。
「そうでしょ」
「ううん、先輩ってそういうところは真面目なんですね」
「約束については」
「というか
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