第三十一話 マウンドのピッチャーその九
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「しかし教育者として中学生では使用が禁じられている突きを生徒に加えたり使用が禁じられているリンチの技を使うことはだ」
「そんな先生本当にいますからね」
「流石にうちの学校にはいないですけれど」
「そうした輩を成敗したことはある」
日下部の生前の話だ。
「突きで吹き飛ばしてやり二度と剣道が出来ない様にしてやった」
「そこまで叩きのめしたんですか」
「その先生を」
「そうだ、その悪事を公表して懲戒免職にしてやった」
そうした意味で二度と剣道が出来ない様にしたというのだ。
「教師の世界では体罰を行っても処罰されないがな」
「自衛隊でもそうじゃないんですか?」
「自衛隊には警務隊がある」
愛実に答える、普通の軍隊で言う憲兵だ。
「そこに言えばそうしたことをする輩は処罰される、しかしだ」
「先生の世界はなんですね」
「そうした内部のチェック組織もなく外部からも遮断されている」
こうした組織は腐敗しやすいのは当然だ、だから教師の世界は腐敗しやすくしかも自浄能力が皆無なのである。
「だから体罰を告発してもその教師は首にはなりにくい」
「普通の組織じゃ社会的に抹殺されますよ」
聖花は弁護士志望の立場からコメントした。
「普通は、ですが」
「そうだな、普通はな」
「はい、あくまで普通は、ですが」
つまり教師の世界は普通ではないのだ。
「それでどうしてその先生を懲戒免職に出来たんですか?」
「学校の外での悪事を見つけたからだ」
学校の中で何をしても問題にならない、だがその外ではというのだ。
「居酒屋で酒を飲んで暴れていた、その際の障害事件を警察に行った」
「日下部さんが叩きのめした後で」
「そうされたんですか」
「そういうことだ」
こう二人に話す。
「弱者、この場合は生徒を虐げるなぞ教育者にあるまじきことだ」
「けれどそういう先生いますからね」
愛実も知っていることだった、実際にその目では見ていないが。
「剣道以外でも」
「いるな、戦後の日本はおかしい部分も多い」
日下部が生前から憂いていることだった。
そうした話をしてそのうえでだった、三人はマウンドを降りた。
そのうえで一塁側のベンチに向かう、その入口でだった。
日下部は立ち止まった、そのうえで二人に言った。
「では行って来るのだ」
「はい、じゃあいつも通り」
「今度こそうだといいですけれど」
二人は既に泉でない可能性の方が高いと考えていた、しかしそれでも次があると思いつつそのうえで行くのだった。
「今度は図書館に行くつもりですし」
「高等部の総合の」
八条学園高等部の図書館は各学科にあるが高等部全体での総合のものもあるのだ。そこにも怪談があるのだ。
「とある本棚の並びに入ると何かあるそうなんで」
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