序章:――
第一話:「まったく、いい人生だった――!(嘘)」
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、赤信号を無視して、暴走するトラックを見つけてしまった。
「……やばいっ!!」
咄嗟にガードレールを飛び越えて、猫の方へと走る。
猫はトラックにも俺にも気づいていないのか、ゆったりとした動きで車道を渡っている。このままでは、冗談ではなく挽肉になってしまう。
轢き逃げなだけに! とか冗談を考えてる余裕はない。
やがて、俺の存在に気づいたのか、トラックは盛大にクラクションを鳴らす。
その音に気づいた猫は、その場で立ち止まって、音のした方向を向く。逃げ出そうとする様子はない。
「くそっ!」
一か八か、俺は猫を手で突き飛ばすのを諦めて、足で掬いあげるようにして歩道へと蹴り飛ばす。
この時、出来るだけ力を入れずに、猫が痛くないくらいの力加減で、左足は添えるだけ……、などと考えていたせいで、俺は一秒ほどその場に留まることになってしまった。
――その一秒が、命取りだった。
全身に響く衝撃と、浮遊感。
暴力的な鉄の塊は、体重六十キロの俺を軽々と宙へと飛ばした。
◇
赤神祐司、事故死より3秒前
◇
周りに人だかりが出来て、叫び声が聞こえる。なんだよ見せもんじゃねーぞ、こんちくしょー。
あっ。そういえば左手にエロゲ持ってるんだった。うわぁ〜、酷い死に様だ。みんな俺を指差して笑ってるに違いない。
ホント、最後の最後まで下らない人生だった。楽しかった思い出なんて、ゲームや漫画にアニメだけだった。
……、まあ、優紀子や鈴菜のことはちょっと心配かもしれない。優紀子は一人じゃなにをやっても駄目な奴で、リアル天然ボケだったし、鈴菜に至っては、俺が死んだら天涯孤独人生に突入だ。幼い頃に、両親は二人揃って病死してしまったのだ。
まあ、なんとかなるだろう。優紀子は多分、彼氏がいるんだろうし、鈴菜は俺のことを目の敵にしていたのだ、むしろ死んでくれて感謝してるかもしれない。
あー考えるのもめんどくさくなってきた。
こういうときはアレだ、かのヤブ医者の名言を残して、現世とお別れしようじゃないか。
「――まったく、いい人生だった……っ」
あ、でも新作のエロゲがプレイできなかったのは超心残りだ。
それにパソコン。あのHDDの中身は、俺が死んだあとどうなってしまうのだろう。考えただけでも全身から血を噴き出してしまいそうになる(ブラックジョーク)。
――最後の最後まで、締まることのなかった俺の人生が、ここで終わった。
――赤神祐司、死亡。
享年二十三歳。
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