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神々の黄昏
第三幕その十
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それを放ち。烏達を見ながら火が自らを赤く照らすのを感じていた。
 そこにグラーネが連れられてきた。彼女をいとしげに撫でてからであった。
「グラーネ、今から私達は私達の行くべき場所に行きます」
 こう告げるのである。
「これから永遠に。貴女も愛したあの人の場所へ」
 ジークフリートは最早炎の中に包まれている。その炎を見てである。
「ローゲが私達を導いてくれます。私達を永遠の契りに」
 最早それまでだった。グラーネに乗り彼女をいななかせて。
「グラーネ、最後の挨拶を」
 そして彼女もまた。
「ジークフリート、見て下さい。貴方の妻が歓喜に溢れて今挨拶をするのです!」
 そのままグラーネを炎の中に飛び込ませた。彼女もその中に消えてしまった。炎は天に伸びていく。
 そこに洪水が来て人々はそれから逃げる。その中にあの乙女達がいた。
 そしてその手に指輪が渡ろうとする。ハーゲンはそれを見て咄嗟に動き叫んだ。
「指輪に近付くな!」
 しかしだった。彼は乙女達に水の奥に引き込まれて消えてしまった。青い世界の中で今乙女達はその指輪を手にし永遠の喜びを味わう。指輪は輝き続け静かにラインの中へと消えていく。誰も辿り着くことのできないその中にだ。
 炎はさらにあがっていく。そしてまずはヴァルハラに向かわんと天を駆けるアルベリヒの軍勢に襲い掛かり彼等を全て焼き尽くしてしまった。
 それからヴァルハラも包み込んだ。神々はそこから逃げようとするがヴォータンは己の玉座から立ち上がり両手を掲げそれを受けた。ヴァルハラもまた炎の中に消え去った。
 ローゲは全てを焼き尽くすとそのまま何処かに去ってしまった。指輪をその手に戻した乙女達は青い水の中で輪舞を舞いながらその奥へ消えていく。残ったのは人間達だった。神々は去り彼等の時代がはじまろうとしていた。その彼等の時代がだ。


神々の黄昏   完


舞台祝典劇ニーベルングの指輪   完


                  2010・2・3

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