第三十話 江田島その八
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「ここまではね」
「結構以上に気楽にやってるわよね」
「そうよね、本当に結構以上に」
「ここまで出来る人は」
英霊達を観ながら話していく。
「今いるかしら」
「いるかも知れなけれど」
「いるのね」
「まだ。私は会ってないわ」
「私もよ」
琴乃もだった、このことは。
「ここまでの人には」
「琴乃ちゃん、やっぱり一途になりたいわよね」
「そうよね、一途にね」
なりたいとだ、二人で話した。そうした話をしてだった。
傍にいる美優に気付いた、美優は特攻隊の資料を見ていた。
二人はその美優に声をかけた、振り向いてきた彼女の顔は。
涙を必死に堪えていた、その顔を見て二人は言った。
「あの、美優ちゃん」
「その目は」
「ああ、これ見てるとさ」
美優は特攻隊のその資料に顔を戻して二人に応えた。
「悲しくてさ」
「そうよね、回天もね」
「見ているとね」
「人ってここまで悲しくてな」
その特攻隊の英霊達のことを見ながらの言葉だ。
「それで綺麗になれるんだな」
「何かの為に一途に、命をかけてまで戦って」
「それで死んだ人達だけれど」
「そうよね、凄く悲しいけれどね」
「綺麗よね」
「こんな人達もいたんだな」
美優の口調はしみじみとしたものになっていた。
「いや、凄いな」
「うん、私達が今こうしているのも」
琴乃も英霊達の残したものを見ながら語る。
「こjの人達がいてくれたからよね」
「そうだよな、この人達が戦ってくれたからな」
「今こうしていられるのね」
「有り難いよな」
美優は涙を堪える顔で言った。
「本当にな」
「そうよね」
「あたしここに来るまでこの合宿ただ飲んで部活して騒いでだって思ってたんだよ」
「美味しいもの食べてお風呂に入ってね」
「そうして楽しむだけって思ってたけれどさ」
「違ったのね」
「勉強になるよな」
三人で英霊達を見て、そのうえでの言葉だった。
「ここに来てな」
「ここに来たのはもう」
里香も言う。
「一生忘れられないと思うわ」
「ここまで必死に、本当に全てを捨てて」
最も大事な筈のその命までもだ。
「戦ってね」
「そうして私達に残してくれたのね」
「今あるものをな」
里香と美優は琴乃のその言葉に頷いた、そしてだった。
三人でその特攻隊の資料を見ているとだ、そこに景子と彩夏も来た。二人は三人のところに来てこう言ったのだ。
「あっ、三人共ここにいたの」
「特攻隊の資料見てたのね」
「ええ、そうなの」
琴乃が二人に応える。
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