第三幕その九
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上げるのです」
「薪を」
「それをですか」
「そうです。そして勇士の亡骸をそこに」
誰もが言われるままだった。ジークフリートの亡骸をそこに置いて薪を積んでいく。ブリュンヒルテはそれを見ながらさらに命じるのだった。
「グラーネを」
「グラーネ?」
「彼の馬です」
それをだというのだ。
「かつては私が乗っていたその馬を」
「ではその馬に乗られて」
「ここを去られるのですか」
「そう、この世を」
この場ではなかった。この世である。ハーゲンはこの間身動き一つできなかった。完全にブリュンヒルテの神性の前に人形となっていた。
そうしてだった。ブリュンヒルテはさらに言うのであった。
「私はその馬で彼の後を追い勇士のいと聖なる誉れを分かちたいのです」
「それが貴女の望みなのですか」
「そうです。そして」
言葉は続く。
「彼の光は日光の様に私に明るく輝きます」
今度はジークフリートを見て言っていた。
「私を裏切った無二の清き人、私を欺き友に信義を尽くした人」
ジークフリートのことに他ならなかった。今彼は薪の中に横たえられている。そして薪はその周りに次々に積まれていっている。
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