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Verweile doch! Du bist so schon.
Verweile doch! Du bist so schon.
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揺らめいて消える。そうして、近くの世界に流れつく。
 かれは数多の世界を探した。数にして百ほどであろうか。数え切れないほどの時間を費やした。
 そうして、また新たな世界に降り立つ。
 その瞬間に彼は気づいた。
 ――――彼女がいる。
 それは確信。あの魂の輝き、見間違うはずもない。この世界で、ようやく彼女に会える。
 ついに、ついに彼女に……!
 笑いが込み上げてくる。いやいけない、早いところ彼女を迎えに行かなければ。
 そうして数日間歩き、悪魔はついに彼女を見つけた。
 とある草原。吹き付ける風の中、彼女は小さな丘の上に立っていた。その銀髪を風に棚引かせ。
 喜びのあまり、声にならない声が体から漏れ出る。
 彼は思わず叫んだ。その魂に、顔に、そのすべてに見覚えがあった。本性が、魂が反射的に叫んでいた。しかしそれは、声にならず音にもならず。ただ空気が洩れるだけだけであった。
 そしてそれは想いの波動となり、彼女に伝わった。
 彼女が振り返る。悪魔と目が合う。視線と視線が絡まりあう。約十メートルほどの距離。
 沈黙が流れる。空気が重くなりかけ。

「こんにちは。我のことを覚えているだろうか、かつてあなたに微笑んでもらった悪魔だ。そう、私はついにここまで来た。
 今こそ想いを伝えたい。貴方を愛しているのだ。美しく思う。ぜひとも、私の伴侶となってほしい。華よ」

 ああ、ようやっと言えた。貴女はいったいどんな反応をするのだろうか?
 待ち受けるかもしれない至上の喜びを想像し、打ち震える悪魔。
 それに対し彼女の反応は、実に対照的なものであった。
 何も言わず、ただ冷たい視線を返す。ただそれのみである。
 だが、この悪魔が今さらそんなことでめげたりすることはない。彼女に向けてその一歩を踏み出す。
 それと同時に、バラの花が悪魔の周りに次々と浮かんでいく。
 1本。3本。11本。50本。99本。100本。108本。365本。そして999本。
 一歩。また一歩と徐々に、だが確実に距離を詰める悪魔。
 そうして彼女に触れる瞬間。

「――無礼者」

 彼女は上空にいた。触れようとした悪魔の右腕は、肩から先が消失している。
 しかし、悪魔は笑みを浮かべる。
 よかろう。あなたが望むならば、私は武力をもって貴女への愛を示すまでだ。
 悪魔の背中から黒い骨のような触手が何本も生える。両手を広げ、空中に飛び上がる。
 あまりにも濃密な呪詛が流れ出し、周囲の空間が根こそぎ腐っていく。
 これが正真正銘の全力前回……ッ! 行くぞ、私の魂を賭け、貴女を手に入れてみせる!
 彼女に向かい、飛び掛る悪魔。
 本能が理性を侵食する。理性が黒く染まり、本能だけが精神を支配する。
 しかし悪魔に後悔はない。すべてを賭け
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