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短編集的な
☆師匠と英雄
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 生きたい。死にたくない。それしか頭に無かった私は、無謀にも魔獣の群に特攻した。奴らが、怯むのがわかった。少し前まで容易に狩れる筈だった獲物が、自分達を襲ってきているのだから。

「わああああ!!」

 私は声を張り上げた。そうしないと恐怖に負けてしまいそうだから。敵を追い払おうと必死だった。だが遮二無二に木刀を奮うわけでは無い。

 死の危機に直面し、私の感覚は研ぎ澄まされていたのだろうか。相手の攻撃してくる気配がなんとなく、わかった。勿論なんとなくなので完全では無い。だが、わからないのとは雲泥の差だ。

 必死に身体を動かして相手達の攻撃から身をかわし、返しの一撃を脳天に叩き込む。360゜全てに気を配り、足音一つ逃さぬように。暗闇の中必死に目を凝らし。

――だが、火事場の馬鹿力など長く続くものではない。

 魔獣を十も打ち倒す頃には木刀も折れ果て撲殺に代わり、更に十打ち倒す頃には拳が使い物にならなくなった。身体も疲れ果て、呼吸すらもままならない。そのまま崩れるように、私は大地に倒れ込んだ。

 もう動かないかを確認するかのように魔獣が私の周囲に近づいてくる。私の間合いに入らないようにしばらく警戒。その間に顔を前に向ければ、ひときわ大きな個体。群のリーダーだろうか。「手間をかけさせやがって」と言うかのような、そんな気配を醸し出しながらこちらに近づいてくる。

――ここで本当に終わりか

 向かってくる個体には勝てないことがわかった。あれは、私の一族が今夜戦っている筈の魔獣。群からはぐれた個体が、小規模な群をつくってこの山に潜伏していたのだ。絶望的な事実に満身創痍となった私が諦めようとした時。

「いいぜ坊主。よく耐えた」

 男の声が聞こえた。刹那、群の主が真っ二つに分かれる。一流の神鳴流剣士ですら手間取る魔獣を、一撃。事態を理解できていない私の眼前に、いつの間にか白い外套と緋色の服を来た偉丈夫が音も無く居た。

「だが最後はいかんな。生きようとする意志は何よりも強い。最後まで諦めるな」

 男の声と一緒に、私は意識を失った。





●●●●●





「懐かしいことを思い出しましたね」

 山への獣道を歩きながら、私は一人苦笑する。思い出していたのは始まりの記憶。人生の転機となった、とある日の記憶。

「この道、でしたかねぇ」

 何分昔であるが為、今は居場所が変わっているかもしれない。そうしたら、麾下の術師を総動員して探すしかない。だがこれは個人の問題。組織の長として動けば「あの人」は絶対に雲隠れする。そんな確信があった。だから願う。住処が変わっていないことを。

 ひたすら歩く。獣道ですらないような道を。この先に住処があると信じて。昼間から闇に
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