§47 -冠を持つ王の手-
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うとう耐え切れずに声を荒げる。水面に写るのは、もはや蹂躪だ。
「黙って見れねえのか、おまえは」
酒を呷りながら須佐之男命が嘆息する。しかし、彼も黎斗が左目から熱線を放ったところで手が止まり、深紅の鳥が牛魔王以上に巨大化、邪気に染まった雷と炎の雨を降らせはじめた時には顔が引き攣っていた。
「あの馬鹿野郎、大国主の坊主の能力まで組み合わせやがったのか……?」
「大国主?」
「うわー、ないわー。マジないわー。ドン引きだわー。……日本壊す気かあの単細胞!!」
「す、すさのおさーん……?」
壊れ始めた須佐之男命に護堂がほとほと困り果て、どうしたものかと救いを求めてヴォバンを見やる。
「……」
東欧の老侯爵もやはり顔が引き攣っており、手に持った蜜柑が握力で潰れていることにも気が付いていない。果汁が布団についておかしくなるのではないか、などと護堂が現実逃避している内に須佐之男命が復旧を果たす。
「異国の神殺しは硬直してやがる、か。まぁ当たり前だろうなこんな光景。……で、おまえはなんでそんな平然としてんだ?」
須佐之男命から問いかけられた内容は、護堂には意味不明で。
「いや、確かにすごいと思うけどさ。お前らが二人して大げさなリアクションとってくれたから俺はそこまで驚かなくて済んだ、っていうか」
実際は何が起こっているのかよくわかっていない。ただ「なんかよくわからんけどすげぇ」ということしかわからないからの余裕なのだろうな、と思いつつもそれは口には出さない。というか、周りが滅茶苦茶焦っていると自分はかえって冷静になるというアレだ。
「成程ねぇ……」
それでも須佐之男命にはわかったらしい。数度頷くと、ヴォバンを見て、硬直が続いているのを確認。再びその口を開く。
「あれが魔神来臨。黎斗の切り札だ。伊邪那美から簒奪した、アイツの最初の権能。その、なれの果て」
「ちょっと待てよ。俺が聞いてもいい話なのか、それ?」
「問題無いだろ。魔神来臨に関しては知っていてもどうしようもない」
サラッと言われたその一言が、衝撃的で、護堂は二の句を継ぐことすら出来ない。
「神格を切り裂こうとしてもあの物量の突破はしんどいからな。実際さっき猿がやったが無理だっただろ」
神格を切り裂く、その発想を先回りしたかのように老神は言う。
「やつの能力自体は単純だ。冥界をこちらに一時的に展開し相手を殺しつつ死者を復元する。厳密な理屈は違うんだが、まぁいいだろう。ここで蘇る死者は一時的な物であり、神獣や人、動物とかそんなもんだ」
イメージとしては死せる従僕+即死空間の形成、だろうか。そんなデタラメが
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